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振り向けば…
第54章 七夕だから…



梅雨だから…。

仕方がない。

だけど雨ばかりの毎日に辟易とする。

外構の安全確認が進まない。

毎日のようにずぶ濡れになり家に帰る羽目になる。

心身共に疲れるとは、こういう状況なのだとかぼんやりとしながら考える。


「森本さん、報告書はええから帰れ…。」

「でも…。」

「チェックシートだけ俺に渡せばええから…。」


会社で放心する私を宮崎さんが心配する。

チェックシートとは外構壁の作りを現場でメモして被害を書き込んだもの。

ひび割れの場所や傾きなどを事細かく記したシートさえあれば、後の判断は宮崎さんにでも出来ると言うてくれる。


「お願いします。」


宮崎さんに頭を下げる。

宮崎さんだって大変な状況に追い込まれてる。

土木が専門の宮崎さんは河川敷の拡張工事の一部を引き受けてる。

その河川敷の現場が今回の震源地のすぐ近くだった為に地盤に不安定な部分が見つかり、取り急ぎの修復工事をしたくとも、雨続きで進まない。

被災の爪が少しづつ自分達に食い込む感覚を味わう。

被災から、既に2週間以上が経つ。

精神的にも限界を感じる。

雨のせいで全く休みが取れなかった。

傾いたりひび割れをしてる外構がこの雨で更に悪化する危険を考えると安全確認を急がなければと焦るだけの毎日になる。

悠真は毎日疲れた顔しかしない私の為に自分のマンションに帰った。

悠真が居たら私が深夜に起きる可能性があるから…。

悠真なりに私を気遣ってくれてる。

今週さえ終われば、さすがに普通に休みが取れるだろうとか考える。

帰りの車の中で雨を睨み付ける。

やっと止んでも、その翌日にはまた雨になる。


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