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振り向けば…
第54章 七夕だから…



車の中は泥だらけ…。

掃除をする気力もない。

運転席のシートカバーの洗濯すら出来ない。

イライラとする。

そんな私に悠真からメッセージだけが来る。


『今週末は大丈夫なんか?』


悠真の誕生日も兼ねて七夕に浴衣を着て京都の床を楽しむ約束。

昼はランチで貴船に行き床を楽しみ、夜は祇園祭を楽しむ予定だった。

なのに今の状況では


『多分…、まだわかんない。』


としか私は答える事が出来ない。

連日の雨続きに川が増水してる。

床どころじゃないかもしれない。

ニュースのチェックが欠かせない。

そして、それは5日の夕方になって私に知らされた。


「俺はやばいと思ってます。」


宮崎さんが社長さんにそう報告をしてる。


「何事ですか?」


宮崎さんと同じように厳しい顔を続ける専務さんに聞いてみる。


「京都の桂川の増水や。」


短く専務さんが私に言う。

桂川が…。

そのすぐ下流は淀川…。

宮崎さんが河川工事を請け負ってる場所。


「淀川も増水が?」

「既に始まっとる。」

「決壊の恐れは?」

「多分、ないとは思うけど、この前の地震で不安定な部分が1箇所だけあるんや。その修復がこの雨続きで出来てないから、そこに流れ込まれたらお手上げになるて社長に説明してるとこや。」


専務さんの言葉で状況の確認だけは出来た。

しかし、社長さんは宮崎さんの言葉にうんと首を縦に振らないらしい。


「社長…。」


宮崎さんが社長さんに詰め寄る。


「出来るなら、やっとる。けど出来んねやったら無事を祈るしかないやろ?」


社長さんが宮崎さんにそんな言い方をする。

自然には勝てないのだとまたしても私は敗北を目の当たりにする。


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