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振り向けば…
第55章 断る…
悠真かて仕事の時は私の事は放ったらかしになるし、それは私の為にやってくれてる仕事だから私は文句が言えない。
私の仕事は…。
私が私であるが為の仕事だと思う。
お父さんと同じように1人でも困った人が居れば助けたいと始めた建築の仕事。
だからと言うて困った人の我儘にまで付き合うつもりはないと思う。
私の時間は私のものだ。
決して悠真を蔑ろにするつもりはないと悠真に理解をして欲しい。
その為にも悠真と話し合わなければと家に帰るなりシャワーを浴びて汚れを落とし、私服に着替えてからもう1度家を出ようとする。
「来夢?ちょっと来て…。」
出掛けようとする私をお母さんが呼び止める。
「えっと…、帰ってからじゃダメ?」
ダイニングに居たお母さんに声を掛ける。
「また出掛けるの?」
「うん…、悠真のとこ。」
「その悠真君の事で話があんのよ。」
お母さんが苦笑いをしてる。
「悠真の…?」
また前みたいにみっともないとかいう話?
仕方がなくダイニングに入り、ちゃんとお母さんの話を聞こうとダイニングのテーブルに座ろうとするとお母さんが苦笑いのままリビングを指差した。
リビングのソファーの指定席には相変わらずのお父さんがタバコを吸うてる。
ただし、お父さんからは露骨に不機嫌オーラが漂ってるのを感じる。
嫌な予感しかしない。
話は悠真の話…。
一体、悠真に何が起きたのだ?
かなりの不機嫌ではあるが私はお父さんに怒られた経験のない娘だ。
お父さんには相変わらず良い子でいたい私だから、ここで逆らう訳にはいかない。
不機嫌なまま私を見ずにタバコを吸い続けるお父さんと、これからとんでもなく長い戦いが始まるとはこの時の私は全く考えてもみない日だった。