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振り向けば…
第6章 俺だけ見てろ…



「最近、元気ないな?」


学校では溝口先輩が私を心配する。

もうすぐクリスマス…。


「お父さんが手術するから…。」

「マジか?大丈夫なんか?」

「わかんない…、もう5回目の手術だし…。」

「そうか…、なんかあったら俺に言えよ。」


先輩は優しくしてくれる。

だけど先輩からは私を慰めようとする意思しか感じない。

お父さんが死ぬ予定の会話。

おじいちゃんもその予定で私にアパートを継がせたのだ。

誰もがお父さんの最後の手術はお父さんが死ぬ予定なのだと考える。

心が乾いて涙すら出なかった。

あれほどお父さんが大好きだった私は手術なんか無駄だと思う薄情な娘になってる。

フラフラと家に帰るとうちの玄関の前に悠真が居る。


「ちょっと来いや。」

「悠真とは話をしたくない。」

「ええから来いや!」


無理矢理に悠真が私を悠真の家に連れて行く。


「なんなんよ?」


冷めた口調でしか話が出来ない。


「お前、まさかオッチャンの手術が失敗するとか思ってんのか?」

「今までも成功してないやん?」

「だから自分は世界一不幸な女ですって態度か。」

「あかんの?」

「あかんやろ?オッチャンを信じたれや。オッチャンかて必死に頑張ってるんや。お前がそんな顔するからもう次の手術は諦めるんやろ?これが最後の賭けやとオッチャンは踏み切ったんやろ?なら、せめてお前だけでも信じたれや!」


叫びながら悠真が私を抱き寄せる。

悠真の手が震えてる。

お父さんを亡くす事に一番怯えているのは悠真だ。

悠真の心臓の音だけがする。

有り得ないほどに大きな鼓動が聞こえる。

悠真と恐怖の中で2人っきりになった。

たった1人だけでお父さんの手術の成功を信じてる悠真の腕の中で私はただ静かに泣く事しかしてあげられなかった。


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