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振り向けば…
第6章 俺だけ見てろ…
最後の手術…。
5回目の手術自体が珍しい。
普通なら体力的にもたないから。
お父さんは若くてガテン系だから体力だけは大丈夫だという判断だった。
だけどそれももう限界だ。
だからこの手術を最後にして、癌が再発しても余命を真っ当するとお父さんが言う。
「さすがに5回目やからな。病院も凄い先生ばかり集めて凄い手術をするらしいぞ。」
膵臓癌の手術は難しいからと専門の先生が集められるという話をお父さんが自慢するように言う。
「好きにしたらええやん。」
冷めたようにしか言えなかった。
だってこれが最後の覚悟。
お父さんも完全に覚悟をしてる。
悠真ですら笑ろうてない。
笑えないお父さんの最後の手術…。
そんな状況なのにおじいちゃんが
「この家の権利を来人にアパートの権利を来夢に移すからな。」
とか言い出した。
お父さんに万が一があるかもしれないから…。
おじいちゃんにも万が一があるかもしれないから…。
お父さんの弟2人はお父さんと仲が悪いから奥さんも孫もこの家に来ない。
おじいちゃんが死んだら弟達はおじいちゃんの財産を寄越せと言うて来る。
それを防ぐには私と弟の名義にするしかないとおじいちゃんが言う。
アパートが無くなったら悠真の家が無くなる。
悠真はそんなおじいちゃんの話も黙ったまま聞いて私をじっと見つめてる。
「好きにすればいいよ。」
冷めた気持ちで冷めた答えだけを私は言う。
どうでもええ気分だった。
思春期の反抗期…。
お願いだから…、私を1人にして欲しい。
毎晩のように夜空を見上げては月に祈る。
もう…、誰の事も考えたくないの…。
自分の事だけで精一杯だから…。