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振り向けば…
第60章 振り向けば…



ちょっと落ち着きのある紅色のワンピース。

ちゃんとメイクをして少しだけお洒落をする。

残念なのは指輪…。

サイズがブカブカだからチェーンに通してネックレスにするしかない。

それでも悠真が目を細めて嬉しそうに私を見る。

お洒落を忘れたら女は終わりだと考えてる悠真はこういう時は少しうるさい。


「ルージュが合ってねぇよ。」

「だって、これしか持って来てないよ?」


薄いピンクのナチュラルカラーしか普段から持ち歩く習性がないガテン系姉ちゃんはルージュを色々と使い分ける高等技術がありません。


「コンビニで買うてやる。」


悠真ががっかりした顔をする。

たかがルージュ。

されどルージュ。

服装のカラーがはっきりした色の時はもう少し色濃いルージュをしろと悠真がボヤく。

悠真は珍しくスーツ…。

Yシャツの袖を捲り、緩めに薄紫色のネクタイを締めてジャケットを手にしてる。

わざわざ畏まる必要のある夕食?

ルージュ1つで面倒臭いとか考える私はブツブツと文句をブータレてレンタカーに乗り込んだ。


「なんでわざわざスーツ?」


口を尖らせて悠真に聞く。

いつもはジーパンにダンガリーなどのラフなシャツやTシャツしか着ない悠真。

家じゃ伸びきったスウェットの上下でゴロゴロとしてだらしない姿しか見せない。

その悠真がスーツとか着てると知らない男の人みたいで落ち着かない。

たかが服装だけなのにドキドキとかする。

普段は伸びきった髪をそのままにしてるくせに軽く後ろへ流すようにしてスプレーで硬めてるから顔立ちがはっきりとして見蕩れてまう自分がわかる。

切れ目長な目…。

まつ毛が意外と長い。

高い鼻。

綺麗な顔立ちというよりも野生的に近い。

そんな整った顔はモテるタイプの男に分類されるから私としてはだらしないままの悠真のじゃないと落ち着かない気分になる。


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