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閃光
第1章 閃光
何処に行く宛もない
ただ、死に場所を探すだけ……


車のハンドルを握る真翔は、助手席で静かに座る高校生、凛をチラリと見た
家に帰っていないのだろう…
小柄な彼は、大きめな夏用の半袖スクールシャツに着られ、車を走らせてからずっと、車窓の外に広がる闇をぼんやりと見つめている


「……」
「……」


二人の間に会話は無い

今から1時間程前に待ち合わせ場所で初対面し、そこで確認の為にお互いの下の名前を言ったきりである
ネットで『逝きたい』と呟いた真翔に、反応した凛が『僕もです』とコメントし、繋がっただけの薄い仲だ


何故死にたいのか、お互い理由は知らない
聞くのは野暮、というものである


車内は空調が嫌という程効き、肌寒い
湿度も落ちているせいか、先程から喉が渇き張り付く
少し咳払いをし、カップホルダーに掛かった缶コーヒーを取ると、真翔はゴクゴクと飲んだ
その様子に気付いた凛は、つられた様に手にしていたペットボトルのお茶を口にする

その同調に、少しだけ緊迫した空気が緩んだ気がした真翔は、オーディオを操作しラジオを繋いだ


スピーカーから流れる、テンポの良いJ-POP

「……」

少し首を捻り真翔に顔を向けた凛が、睨みつける様に冷たい視線を送った
これから死ぬ人間が、何を悠長に音楽など聴こうとしているんだ……
そう訴えているかの様だ

その視線に責められた真翔は、直ぐに音を消す

再び静寂が車内に戻ると、凛は先程と同じように車窓の外を眺めた




ただ一緒に死ぬだけ
それ以上でもそれ以下でもない


ただひたすら走り続ける車は
今の二人の終末を映し出すかの様に
外灯などの光が殆ど無い闇の中を走り続ける
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