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閃光
第1章 閃光
練炭を、助手席にセットする
車内が熱くなる事を想定し、クーラーを掛けっぱなしにしておこうとする真翔に、エンジンを切って、と凛がお願いする


そして後部座席へと移動し、改めて向き合って体を寄せる
凛の大きな瞳が一層キラキラと、それでいて少し不安げな色を見せた

凛の頬に触れる
先程より少し熱を帯び、生きている事を実感する
真翔の顔が近付くと、凛はそっと瞼を閉じた
そして少しだけ突き出された柔い唇を、真翔の唇が塞ぐ

「……!」

凛の目が、パチンと開く
まるで、今目を覚ましたかの様に

「……これ、は…?」

舌先に載せた異物を真翔に出して見せる

「死ぬ時に苦しまずに済む、魔法の薬……睡眠導入剤だよ」
「……ふ、」

凛の顔が少し綻ぶ

「そんな魔法があるなら、早く言ってよ」

先程まで硬く冷たかった凛に浮かぶ
柔らかで可愛らしい表情

その表情に、恋人の面影が重なる



「……凛!」

心の中で恋人の名前を呼びながら、目の前の人の名を口にする

二の腕を掴んで、喉仏の浮き出た細い首筋に顔を埋める
舌を這わせ、吸い付いた後、柔く歯を立てた

「……ん、」

鼻から抜ける甘い声
声変わりしてないような、細く高い凛のそれに、真翔の心が震える


……生きてる


毛細血管にまで、沸騰した血が押し流され、肌がじんわりと汗ばんでいく

その甘く痺れた手でボタンを外し、凛からシャツをするりと剥ぎ取る
そして露わになったそこに、真翔は息を飲んだ


「……これ、は…?」

現れたのは、躯幹についた幾つもの赤いマーキング
そして、所々刃物で浅く切られた痕、圧痕……
透き通る様な白い肌に浮き彫りになったそれは、凛の身に何があったのかを容易に想像させた


『この体は、大人の欲に塗れてしまって……もう、綺麗なんかじゃないけど……』


先程の言葉を思い出す


『………いいよ、しても……
その代わり……その人にする様に愛して
……僕に、教えて』


……そういう、意味だったのか……


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