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第1章 プロローグ

僕は、結婚を機に実家に戻ることを考えていた。別に母とケンカ別れをしたわけでもない。やがては家業を継ぎ、母を助けたいと思っていた。

美穂に話すと、喜んで賛成してくれた。

「親孝行は元気なうちにしなくちゃね」

「でも姑さんと一緒に暮らすのって嫌じゃない？」

心配して尋ねると、美穂は大きくかぶりを振った。

「大丈夫。優斗さんのお母さんだもん、きっとうまくできるよ。うまくできるようにがんばります」

「ほんとに？」

「ほんとに。それにもし何かあったら優斗さんが助けてくれるんでしょう？」

上目遣いで美穂が顔を寄せてくる。こんな愛くるしい顔で見つめられたらどうしようもない。行けと言われれば地獄だって行けるだろう。

「それはもちろん」

僕は胸を張った。

「だったら大丈夫」

「美穂、ありがとう！」

僕は、もう一度、美穂をギュッと抱きしめた。心が満ち足りてくるのを感じる。僕は幸せをかみしめながら、母も喜んでくれるだろう、単純にそう考えていた。

母の許しを得るために、僕は美穂を連れて８年振りに実家に帰ることにした。