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郁美の真実 〜妻を閉じ込めた魂の檻〜
第14章 〜不愉快な訪問者、郁美へのささやかな贈りもの〜
片付けをしながら、目も合わせず叔父に言った。


「どうしました?」

叔父
「話はだいたい聞いてきた。離婚を考えてるそうだね。」


「もう考えちゃーいませんよ。決まったことです。」

叔父
「まあ、そう喧嘩腰になるなよ。どうだ、昼間っからだが、どこかへ飲みに行かないか?」


「昼間っから飲みたいんですか?あいにく忙しくって、外へ出る暇はありませんよ。」

私は冷蔵庫から缶ビールを取り出し、叔父の前に突き出すと、自分も冷凍庫に入れていたジンを取り出してラッパ飲みした。

こんなヤツの相手、シラフではやってられない。

叔父
「喧嘩の理由は郁美の浮気だって?」


「ケンカはしていませんね。別に郁美は悪くない。仕方のない話だ。」

叔父
「おっ、分かってるじゃないか。そうだ、浮気なんか大した話じゃない。今回のことで即離婚ってのは、子どもじみた話だぞ。」


「うん、まあ、浮気なんか大した話じゃありませんよ。」

軽く流してジンをあおりながら、片付けを続ける。

叔父
「それでは、なぜだ。長く夫婦関係を続ければ、一度や二度の浮いた話などある。私だってそうだ、愛人のひとりやふたりはいる。」


「古臭い話し方だ。あなたに愛人がいようがいまいがどうでもいい。」

「まーしかし、叔父さんは叔母さんにもそんな思いさせてんだ。サイテーなオッサンだな。」

叔父
「随分生意気な言い草だな。少しは見込みのある男かと思っていたが。」
「私が説得に来たと思っているようだが違うぞ。」


「へー。何しに来たんです?」

叔父
「命令に来たんだよ。うちの親族で、浮気などというくだらん理由で離婚を認める訳にはいかん。家柄に傷が付くんだよ。田舎の公務員の小せがれの君にはわからんだろうがな。」

「それだけじゃない。君のとこの会社にとって、うちの社はお得意様だ。私のような執行責任者に逆らえば、圧力をかけて君の処遇をなんとでもできるぞ。」


「ほー。」
「おれのことはいい....だが、おれの親父のことを馬鹿にしやがったな?」

「オマケに説得に来たのは郁美のためじゃなく、親族の世間体のためときた....」

「オッサン、ちょっとビール飲んで待ってろよ。いいもん見せてやるから。」

私は不覚にもブチギレた。
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