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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
…翌朝、目覚めた時にまたしても褥に岩倉はいなかった。
慌てて身を起こし…笙子は小さなため息を吐いた。
昨夜の出来事が走馬灯のように過る。

夜着越しの岩倉の優しい愛撫…。
皮膚の奥が温かな紅茶に浸した角砂糖のように脆く崩れ落ちそうな…初めての快楽を得た。

生まれて初めて…男に素肌を晒した…。
消え入りそうなくらい恥ずかしくて堪らなかったが、岩倉の甘やかな…温度の高い眼差しに、背筋が震えるような悦楽を感じた。

…岩倉は、言葉通りに笙子の乳房だけを見つめると、丁寧に夜着を着せてくれた…。

そして、優しく褒めてくれた…。
「よく頑張りましたね。…いい子だ」
…岩倉の胸の中にいると、頼もしく優しい理想の父親に抱かれているような安堵感を得られる…。

…けれど、岩倉の優しさにいつまでも甘えてはいけないこともわかっている。

…自分から、千紘さんに身を委ねるようにしなくては…。

けれど、それは岩倉の全く違う一面…男としての一面を目の当たりにしなくてはならないのだ。

…それを享受できる強い心が…私にはあるだろうか…。

…ともすれば、封印しているあの暗く忌まわしい過去の亡霊が蘇りそうになるのだ…。

笙子はぞくりと背中を震わせ、自分の身体を抱きしめた。
…考えてはだめ…!考えてはいけないわ…。
笙子は首を振り…目を閉じて落ち着こうとした。

…そこに明るい声が響き渡り、襖が陽気に開かれた。










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