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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
「花嫁様は?花嫁様はまだなん?」
肇がそわそわと奥座敷から廊下へと首を巡らす。
「笙子ちゃん、綺麗やろなあ…。どんなおべべ着ているんやろ」
駿がにこにこしながらお膳の料理をつまみ食いをしようとして、道子に手を叩かれる。
「あと少しやからお行儀良く待っときよし」
稔は、不機嫌そうに片膝を立て柱にもたれかかっている環を覗き込む。
「環ちゃん、どないしたん?笙子ちゃんの花嫁様、見たくないんか?」
環はじろりと稔を見遣る。
「俺はお前たちみたいに単純じゃないんだよ。
あ〜あ、俺のミューズが完全に千紘のものになっちゃうなんてなあ…」
ボヤく環の隣に、笙子の支度を手伝っていた伽倻子が戻ってきた。
色留袖に品良く結い上げた髪が母親らしく、大層似合っている。
「笙子様、とってもお綺麗よ。あんなにお美しい花嫁様を初めて見たわ」
その言葉を聞き、環は益々機嫌が悪くなる。
「あ、そ」
そっぽを向いた環を愛おしそうに見て、そっとその手を握りしめる。
「貴女は美しいひとが大好きでしょう?笙子様はご結婚されても、ずっと貴女のミューズだわ」
環は、ふんと鼻を鳴らすと立ち上がり、廊下に出ていった。
その背中にはどこか照れ臭さが感じられ、伽倻子は可笑しさを堪えながら、上座に座っている笙子の両親の元に挨拶に向かった。
肇がそわそわと奥座敷から廊下へと首を巡らす。
「笙子ちゃん、綺麗やろなあ…。どんなおべべ着ているんやろ」
駿がにこにこしながらお膳の料理をつまみ食いをしようとして、道子に手を叩かれる。
「あと少しやからお行儀良く待っときよし」
稔は、不機嫌そうに片膝を立て柱にもたれかかっている環を覗き込む。
「環ちゃん、どないしたん?笙子ちゃんの花嫁様、見たくないんか?」
環はじろりと稔を見遣る。
「俺はお前たちみたいに単純じゃないんだよ。
あ〜あ、俺のミューズが完全に千紘のものになっちゃうなんてなあ…」
ボヤく環の隣に、笙子の支度を手伝っていた伽倻子が戻ってきた。
色留袖に品良く結い上げた髪が母親らしく、大層似合っている。
「笙子様、とってもお綺麗よ。あんなにお美しい花嫁様を初めて見たわ」
その言葉を聞き、環は益々機嫌が悪くなる。
「あ、そ」
そっぽを向いた環を愛おしそうに見て、そっとその手を握りしめる。
「貴女は美しいひとが大好きでしょう?笙子様はご結婚されても、ずっと貴女のミューズだわ」
環は、ふんと鼻を鳴らすと立ち上がり、廊下に出ていった。
その背中にはどこか照れ臭さが感じられ、伽倻子は可笑しさを堪えながら、上座に座っている笙子の両親の元に挨拶に向かった。