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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
支度を終え、女中のミツに導かれながら、大広間に案内された笙子は入り口で思わず立ち止まった。

「お母ちゃん!俺のたまごやき、肇が取りよった!返せ!アホ!」
「お前が食うのが遅いから悪いんや!のろま!」
「こら!肇!意地悪したらあかん!
穫、卵焼きはようけあるから、早よ食べ。
あ、お浸しも食べなあかんよ。
…ちょっと、駿!またあんたはなんも食べんとぼ〜っとしとるの。
早う食べんとまた遅刻するで!」
「…お母ちゃん、俺の帳面…のうなった…」
「まあたあんたはぎりぎりにそんなこと言いよってもう!
多江、悪いけど、新しい帳面探してきて」
「はい!若奥様!」
「…あんた達、毎日毎日よう飽きんなあ…。お父さん、お代わりは?
ちょっと、旦那さんにご飯よそってんか」

…蜂の巣を突いたような大騒ぎであった。
三十畳はあろうかという大広間に、長い座卓が連ねられ、そこには同じ顔をした小学生位の子ども三人並んで小競り合いしながら朝食を食べていた。
向かい側には、その子らの母親らしき三十絡みのふっくらとした闊達な女が傍らの幼児の口に粥を押し込みながら、子ども達に檄を飛ばしていた。
その傍らで、涼しい貌で味噌汁を啜るのは昨日対面した岩倉の母、篤子だ。

茫然と立ち竦む笙子の元に、岩倉が歩み寄る。
「驚かれたでしょう。…兄夫婦と兄の子ども達です。
父と兄も先ほど、出張から戻りました。
今、ご紹介します」

岩倉が大騒ぎの中、朝食を摂る一堂に声をかける。
「みんな、ちょっと聞いて下さい。
…僕のお嫁さんを紹介します。
一ノ瀬笙子さんです。仲良くして差し上げて下さいね」

一堂の視線が一斉に笙子に集まる。
子ども達が歓声を上げた。
そのうち二人が箸を放り出し、笙子の元に走り寄る。
「わあ!こん人が千紘ちゃんのお嫁様か?
綺麗なひとやね!」
「ほんまじゃあ!お人形さんみたいや!綺麗な、いとさんやあ!」
「笙子さん、こっちが兄の子ども達の肇と穫です。
…あちらでご飯を食べているのが駿です。
三人は三つ子なんです」
「まあ…三つ子ちゃん…。可愛らしい…」
笙子はほっと息を吐く。

肇と呼ばれた少年は好奇心に輝く瞳をくるくる回し、笑った。
「ばあやや姉やが、千紘ちゃんは面食いやからなかなかお嫁様がこん言いよったがほんまやったなあ!べっぴんさんや!」
岩倉が咳払いし、諌める。
「余計なことを言うな、肇」

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