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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第9章 甘え方の問題

「ぁ……ん……」

 ローゼルは緩やかに包み込まれる様な愛撫を受けながら、急に気怠さを感じ始めました。
 口淫して酒を使い、深く貫かれて執拗に快感を与えられ、激しく突かれて喘がされ続け、舐められ噛まれ口づけられて、上り詰めて達した後もこうして抱かれてあちこを弄られて居るのです。疲れ果てていても、不思議ではありません。
 
「……んっ」

 ローゼルは自分に回されている手に手を重ねると、ぴったりくっ付けられている背中に自分の体を持たせ掛けました。

「……ふ」
「……眠い?」
「ん」

 小さく頷くと、抱かれている腕に力を込められて耳元に頬擦りされました。

「お休み」
「……ん」

 なんとなく淋しい様な気がして振り向くと、目で見るより早く唇が塞がれました。お互いを味わう様な口づけを交わしながら、ローゼルは愛撫の中でとろとろと抗い難い眠りに落ちて行きました。


     *


「寒っ……」

 ビスカスは袖を捲った大きめの防寒着から出ている手袋で鼻を擦り、ついでに鼻をすすりました。
 兄弟子と話した後、ローゼルの元にまっすぐ帰ろうと決めました。なのに何故だか余計な仕事に巻き込まれ、南どころか北の地に連れて来られておりました。

「うー、冷えますねー……」
「何言ってんの?毛皮着てんでしょ。あったかーいとこでお嬢様抱っこして、ぬくぬく暮らしてるからよ」
「……へ……い。」

 ビスカスは一瞬反論しかけましたが、出てくる前の朝の事を思い出して、やめました。
 
(確かに、毎日お嬢様を抱っこして、ぬくぬくしてはいまさぁねー)

 そう思っていると兄弟子は、聞きようによっては可愛くなくもなく、きゃあ!と声を上げました。

「あらー!言い返して来ない!いやだわぁ、ふ・し・だ・ら!」
「ちょ!ふしだらって!俺達ゃ結」

「師範、兄者」

 ビスカスが返事をしかけた所に、遠くから声が掛かりました。

「……ああ、お帰り」

 兄弟子が声の主の方に向かって行くのに、ビスカスはのろのろと付いて行きました。足の長さも寒冷地慣れの度合いも違います。一緒に行くのは無理でしょう。そもそもビスカスは、急遽参加したオマケです。急ぐ必要は有りませ。
 「ふ・ま・じ・め!」と言われそうにもたもた歩きながら、ビスカスは先程ちらっと思い浮かべた、あの朝の事を思い返しました。


     *
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