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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「お前……」
タンムはビスカスを見て、眉を顰めました。
「……ゆるゆるに緩んでるぞ、顔……」
「へ?さいですかー?引き締めたつもりなんですが」
ビスカスは鏡を見て己の緩みっぷりに驚いて、即座に諦めました。
今日緩むなと言うのは、無理です。
(今だって緩んでんのかもしれねーけど、この後、もっと緩むに決まってんだろー?今引き締めても、無駄な抵抗って奴じゃねーのか……?)
「無理も無いか……結婚式だからな」
「へい。結婚式ですー」
ビスカスはタンムの溜め息混じりの言葉に、へにゃーっと崩れそうになりましたが、上半身までで崩れ止まりました。今日は一日中結婚婚礼新郎新婦花嫁花婿結婚式といった言葉を浴びまくるのですから、心して慣れておかなくてはなりません。
「しかも、水晶の薔薇様の結婚式ですからねー?みなさん新婦しか目に入りやせんから、俺なんざどんなだって、なんなら代わりにカカシかなんかになってたって、きっとでーじょぶですよー」
「それもそうだな。が、少なくとも口だけは閉じてくれよ」
「へえ……努力しやす」
返事に間が空いたのは、支度が済んだ花嫁を見たら、口が開きっぱなしになるという確信が有ったからです。
「……タンムさ……じゃねぇ、お義兄さん……?」
「なんだい?」
「口が開きっぱなしにならねーように、口ん中になんか入れてとくってな、どーですかね?」
「何かって、何だ?」
「……苺とか?」
「匂いで気付かれて、ロゼに殴られるぞ」
「じゃあ……カエルとか?」
「ビスカス。」
「へい。」
大真面目な顔で名を呼んだ義兄に、大真面目な顔で答えました。
「誓いの口づけの時は、どうするんだ」
「……あ。」
「カエルは、確実に逃げるぞ」
「逃げやすねー……」
「ロゼの方に跳んだら、どうするんだ」
「どうしやすかねー……」
「…………冗談は、その位にして」
「へ」
冗談ではなく本気で考え込んでいたビスカスは、肩透かしを食らいました。
タンムに真顔で揶揄われているのにも気付かずに、そんな事を本気で考えてしまうのが、ビスカスがどれだけ緩んで浮かれてふわふわと浮き足立っているかという証拠でしょう。