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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題
「お前のお客人お二人は、もうお目覚めだったぞ。お嬢さんの方は、ロゼの指示でお支度中だ」
「えれぇ早ぇですねー」
ビスカスは、身繕いをしながら言いました。
どうせローゼルの元に行った後に、あれこれと直されるのです。努力が無駄になるより、とりあえず見苦しくない程度にしておく方が無難でしょう。
「女性は何かと時間が掛かるからな……ところで」
タンムは周りを見回してビスカスの近くに寄り、声を幾分か低めました。
「ウバシ様は、ご事情をご存知なのか?」
「その件ですかい」
ビスカスはほんの少し嫌そうに、眉間に皺を寄せました。
「俺ぁ、言っちゃねーですが……おおよそは知ってんじゃねーですか。あの人ぁ地獄耳ですからねー」
上着を着てみようとして手に取ったビスカスは、襟元をちらっと眺めて、着ないで手に持ちました。窮屈な時間は、短ければ短い程良いからです。
「そういう事は、むしろ、お義兄様のが詳しんじゃねーですかい?」
「どうして?」
「昨日、ご挨拶なさってたじゃねーですか。初対面じゃあ無さそうでしたね」
「……お会いした事は、有るよ?だが、親しい訳じゃ無い」
ビスカスは、肩を竦めました。
どうせ、ウバシを巻き込むのです。その為に仕事としての出席を依頼したのですから、今既に知り合いかどうかなど、問題では有りません。ウバシがジャナと帰る頃には、タンムとウバシは嫌でも知り合いになっているでしょう。
「ところで、上のお義兄様は?」
ビスカスは、しばらく夫婦で不在にしていた、長兄の事を尋ねました。ローゼルの式には戻れる様に、手配を整えていた筈なのです。