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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第11章 器用さの問題

「……ん……そろそろ、行かなくちゃ……」
「……くれぐれも、大人しくなさって下さいね?踊りだけじゃなくて、酒も禁止です。」

 長い口づけの後だから……という意味だけでない溜め息が、ローゼルの濡れた唇から漏れました。

「そんなに、厳しくしなくても……ちょっとくらいは」
「駄目です。言うこと聞かねーなら、お加減が悪くなったからって言いふらして、ここに閉じ込めちまいますよ?」
「……馬鹿ね、ビスカス」

 ローゼルは半分呆れながら、ビスカスの口に付いた紅を手巾で拭いました。

「へえ、俺ぁ馬鹿ですよ?馬鹿で結構です。俺ぁ今日から嫁馬鹿じゃなく、妻子の為の大馬鹿でさあ」
「分かりました。大人しくします、甘やかし屋の旦那様」
「そりゃ結構。この世で一番麗しい、俺の大事な宝物の奥方様と……」

 二人は少し見つめ合って微笑んで、手を重ね合って、一緒にお腹に手を置きました。

「……秋だか冬だかにお生まれになる、お坊ちゃまだか、お嬢ちゃま」

 二人は、しばらく何も言わずに寄り添って幸せを噛み締めました。


 産まれて、

 出会って、

 一緒に育ち、

 一度離れて、

 主従となって、

 気持ちが離れて、

 また結ばれて、

 恋人になり、

 婚約者になり、

 夫婦になって、

 今、緩やかに家族になろうとしています。


「幸せよ、ビスカス。今日ほど幸せだった日は無いわ」
「俺もです。俺にゃあ今日は、あんたが生まれた日とおんなじくれぇ幸せな日です」

 微笑み合って、もう一度、口づけを交わして。

「……んじゃ、参りやしょうか、奥様。」
「はい、旦那様。」

 二人は共に手を取り合って、お客様方の待っている広間に向かって、ゆっくり部屋から歩み出しました。


    ……And they lived happily ever after!

(……そして二人は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ、おしまい!)

 
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