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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第12章 君に捧げる(2019母の日、1000エモ御礼)

「でーじょぶですか?」
「……大丈夫よ」

 ローゼルとビスカスは、珍しく馬に乗っておりました。

 物を持たせると不器用なビスカスは、馬以外の乗り物には、ただ大人しく乗せられている事しか出来ません。乗っているのが生き物である馬で無ければ、「大丈夫?」と聞く人間が、主従で入れ替わっていた事でしょう。
 ……しばらくすると。

「なんともねーですか、リュリュ?」
「……ビスカス。」

 毎日毎日目にしていても少しも飽きる事の無い、美貌の佳人と名高い妻は、不服そうにビスカスを振り向きました。

「それ聞かれるの、百回目くらいなんだけど」
「すいやせん……けど、どーにも心配で」

 自分でも言い過ぎかもしれないと思っていたビスカスは、睨まれてしゅんとなりました。

「あのね?今なら良いって、言われてるのよ?今来なかったら、何ヶ月もだか、下手したら何年先になるのか、分からないのよ?」
「分かってやす!分かってやすけどっ……」

 充分、分かってはおりました。

 今から二人で赴く場所が、ローゼルが絶対に来たい場所で有ることも、
 徒歩か馬でしか来れない場所で有ることも、
 今なら良いと言われる時を、妻が心待ちにしていた事も。
 子どもの頃からずっと傍に仕えているビスカスには、誰よりも良く分かっていたのです。

「ほら、もうちょっとよ。ちゃんとバリオスにお願いして頂戴」
「へい……バリ公、不安にさせてごめんな。あとちっと、宜しく頼む」

 ビスカスのおろおろした百度の問い掛けを、馬耳東風と聞き流していた賢い馬は。
 若夫婦の頼みを聞いて「分かってますよ」と言う様に、ブルルと短くいななきました。

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