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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第12章 君に捧げる(2019母の日、1000エモ御礼)
*
「着きやしたねー」
「ええ」
「動かねーで下せぇよ」
「ん」
ビスカスは極力馬を揺らさぬ様にひらっと地面に降り立つと、まずローゼルの荷物を受け取り、そっと、地面に置きました。
「気をつけて」
「ええ」
バリオスは小柄な馬ですが、それでも地面までは決して近く有りません。ビスカスは妻を慎重に抱き抱えて地面に安全に下ろすと、ふーっと安堵の溜め息を吐きました。
「行きましょ、ビスカス」
「へい」
ここまで来る道は明るく起伏のある森の間に通された細道でしたが、ここは幾分か開けています。
ローゼルは持って来た小さな花輪を手に取って、近くに有った小さなお墓に歩み寄りました。
「……お久しゅう御座います、お母様」
「奥様、大変ご無沙汰致しております」
挨拶をするローゼルの後ろで、ビスカスもお辞儀を致しました。
「みんな恙無く息災ですわ。庭も、きちんと守っています……摘んでしまうのはお嫌かと思ったんですけど、お見せしたくて、少しだけ」
ローゼルが捧げた、銀梅花とオリーブ、薔薇で作られた花輪は、森の木々の中に有っても素晴らしい芳香を放ちました。
「……それと……報告が、遅くなったのですけれど」
ローゼルは傍らのビスカスを見て、少女の様に屈託なくにっこり微笑み合いました。
「ビスカスと、結婚しました。それから……お腹に子どもも授かりました。順調に行けば、お母様は今年のうちにはお祖母様ですわよ」
「すいやせん、奥様。そーいう事になりやした」
えへへーと笑うビスカスの手を、ローゼルはきゅっと握りました。