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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第5章 慣れの問題
「『お嬢様』。」
「へっ?」
「今日から、お嬢様は、禁止よ。」
「えええええっ!?」
驚くビスカスを見たローゼルは、むっとした顔になりました。
「今日、サクナ様に聞かれたのよ。『まだビスカスの奴ぁお前の事をお嬢様って呼んでんのか?』って」
(サクナ様……余計なお世話でさあ……!!)
それは、先日ビスカスもサクナに聞かれた事でした。その時ビスカスは、すぐではなくておいおいに、と答えたのです。
(ウサギが居ねーからって、人の女ぁ揶揄って遊ぶなぁ止めて下せーよ……!!)
大方、スグリ姫との話の種に聞き出そうとでもしているのでしょう。ローゼルはともかく、ビスカスにとっては迷惑千万な話です。
ビスカスがサクナへの不満を募らせていると、ローゼルの拗ねた様な声がしました。
「サクナ様に言われたから……だけじゃ無いのよ?」
「へ」
ローゼルは艶々した紅色のスモモの様な唇をきゅっと尖らせ、ビスカスはそこに目が釘付けになりました。
「だって、私達、結婚したのよ?もう私、お嬢様じゃないじゃないの。私、お前の奥様よ?」
「うぉっ?!」
「何よ。嫌なの?」
「や……ちょっとっ……輝かし過ぎて、目眩が……」
「早くお慣れなさい。今はまだ仮婚礼だから仕方ないけど、正式な婚礼の後は、お嬢様は厳禁よ」
「えええっ!?」
「何よ」
「そんなの、淋しーじゃねーですか……お嬢様ってなぁ、俺にゃあすげー愛着が有るんですよー……」
「……じゃあ、二人だけの時たまになら、許してあげないでもないけど……」
「えっ!!良いんですか?!」
ビスカスが余りにも嬉しそうだったので、ローゼルは少しへそを曲げました。
「……良いけど、代わりの名前も、考えて。考えて、決めて、呼んでみる練習をしながらだったら、『お嬢様』も続けても良いわ」
「うぇぇえええっ!?」
「さあ、『お嬢様』以外の名前で呼んでみてご覧なさい。ちゃんと呼ばなきゃ、返事しないわよ」
「えっと……ろっ、ローゼルっ!!」
ビスカスは、かなり思い切りました。
呼び捨てなど恐れ多い上に、少し前まではそんな呼び方をしたら強かに引っ叩かれて、頬っぺたに味わい深い趣の手の跡が付いていたかもしれません。
「……固い。」
そんなに思い切ったにも関わらず、妻と言う名の暴君は、尊大に腕を組んだままビスカスに白い目を向けました。