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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
「お嬢様?お嬢様っ!」
爽やかな初夏の朝。
清々しい空気をぶち壊す様に、焦った女の声が館の廊下に響いております。
「おはようごぜぇやす。……どうなすったんですかい?」
「おはよう、ビスカス。どうなすったかですって?分かってんのに聞くんじゃ無いわよ」
「……また立て籠もってらっしゃるんですか……」
お嬢様付きの侍女の言葉に溜め息を吐いたビスカスは、上着のポケットから何かを取り出しました。
「お嬢様、おはようございます。お目覚めのお時間ですよ」
使用人歴=ほぼ年齢、現在立て籠もり中のこの館のお嬢様・ローゼルが生まれた時からの御付の一人で現在護衛二年目のビスカスは、取っ手の辺りで何やらしながら、扉を軽く叩きました。
しばらく様子を窺いましたが、音はしません。
返事も有りません。
「……失礼致します」
ビスカスは、おもむろに扉を開けました。
「え、鍵は」
「おはようございます、お嬢様。朝で御座いますよっぐぶっ」
「出てお行き、無礼者」
入室すると蹴躓く位置に上手く仕掛けられた重たいクッションに、ビスカスはまんまと引っ掛かりました。そのビスカスの屍を乗り越えた侍女は、ローゼルに泣き付きました。
「お嬢様、本日は先生がいらっしゃる日ですよ。お支度なさって頂かないと間に合いません」
「体調が悪いの。休むわ」
「体調って」
腕を組んで仁王立ちして侍女とビスカスを睥睨しているローゼルは、全く不調には見えません。
「月のものよ。」
二人が疑わしそうに暴君を見やると、ローゼルは得意気に言い放ちました。
「え、こないだ来たばっかりじゃ……痛ててててて!」
「下品!変態!!恥知らず!!!」
ローゼルは羽枕を手に持って、躓いたままのビスカスにつかつかと近寄り、強かにぶっ叩きました。
「お嬢様、お止め下さい!枕が壊れます!!」
「え、枕の心配ですかい!?」
「二人とも、今すぐ出て行って。」
侍女と護衛の漫才に鼻も引っ掛けず、お嬢様は凍る様な声で冷ややかに命じました。
「お嬢様!」
「私は今から月のもので寝込みます。お父様にそう伝えて頂戴」
「畏まりやしたー、今月三回目の月のものですね」
ビスカスが要らぬ確認をすると、一旦落ち着いたローゼルがまた激高しました。
「さっさと出てお行き、この猿!今度鍵開けたら泥棒って訴えるわよ!」