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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
「はぁーーーーぁ……」
ビスカスは庭を見回りながら、溜め息を吐きました。
お嬢様はあの後部屋から出ず、父である領主様が様子を見に行きました。結局は何かしら食べ物を運ばせて寝かせておくという事になった様です。
(このままじゃ、良くねーよなあ……)
ローゼルは昔から我が儘で気紛れで暴君でしたが、昔はここまででは有りませんでした。
部屋に籠もりがちになったのは、半年ほど前にローゼルの母であるこの館の奥様が亡くなって、三ヶ月ほど経ってからでした。
ビスカスは一年で一番美しいとさえ言える庭を眺めながら、また溜め息を吐きました。
この季節の庭は生き生きとしていて、奥様が好んでいた薔薇も美しく咲き誇っています。中でも、サーモンピンクからオレンジへ、オレンジから朱へと色を変える柔らかな花片を持つすらっとした姿の香りの良い薔薇は、奥様のお気に入りの花でした。
ビスカスは、奥様がお元気だった頃ーー自分がまだ護衛ではなく単なる御付だった頃、ローゼルと三人で庭の手入れを楽しんだ事を思い出しました。
* * *
「お母様は、麗氷の薔薇って呼ばれてらしたのよね?」
「ええ、そういう事も有ったわね」
薔薇を愛でながらわくわくと尋ねる娘に、奥様は微笑みました。
奥様は娘時代、二人の姉と並んで北の地の美人三姉妹と謳われておりました。長姉は百合、次姉は鈴蘭、末娘の奥様は薔薇の花になぞらえて、美しさを讃えられて居たのです。
「お母様が薔薇だったら、こんな風なピンクの薔薇ね!!とっても優しくて、優雅で、綺麗だもの……リュリュは、大きくなったら何て呼ばれる様になるかしら?」
ローゼルのおしゃまな物言いを聞いた奥様とビスカスの顔には、思わず笑みが浮かびました。
普通の女の子であれば、大きくなったからと言って人々が自分を讃える名を付けるなどという事は、思い付きもしない事でしょう。もし思い付いて口にしたとしても、周りの大人に失笑されるだけです。しかし、ローゼルはそのような事を口にしてもおかしく無い理由を、幾つも持っておりました。
一つ目は、母である奥様もそのような存在であったという事です。母親が持っているものは自分にも備わっていると娘が思うという事は、おかしな事では有りません。