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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題
年も押し詰まった、ある日のこと。
ローゼルとビスカスは、街に買い物に来ておりました。
買い物の一番の目的は、年明けに帰ってくるスグリ姫への贈り物を選ぶことでした。年末年始は街全体が休暇に入るので、長いこと店が閉まります。スグリ姫が帰るまではまだ間がありましたが、のんびりしていると間に合わなくなるかもしれません。
……と言うのは口実で、二人の思いが通じて以来、一緒に私的な外出をしたことがまだ無かったので、単に二人で街をぶらぶらしたい、と言うのが二人のーー特に、ローゼルのーー本音と言った所でした。
ビスカスは寒い時期に出掛けてローゼルが風邪を引いたり、人混みに行って変な輩に絡まれたりしてはと、最初は外出に反対しました。けれど、「あなたと手を繋いで一緒に街を歩いてみたいの」というローゼルのはにかんだお願いを聞くなり速攻で完敗し、外出する事を決めました。
但し、天気の良い寒くない日に、寒くない格好で、あまり混まなくて日の高い間の短い時間だけ……という、ローゼルの健康を過度に保護する条件は、頑として譲りませんでした。
「おじょ……ローゼル?」
「なあに、ビスカス」
二人で出掛けて来ているとはいえ、周りには人が居ます。増してや二人が今居る所は、女性の好む小物が揃う、こぢんまりした小間物屋です。
ビスカスの様に女に連れられて来ている者や女への贈り物を買いに来たらしい者など、男もぽつりぽつりとは居るものの、九割方、女ばかりの店です。
何処に居ても人目を集めずには居られない美しいローゼルと手を繋いで居るだけでも顔から火を吹きそうに恥ずかしいのに、女だらけの店に入って一緒に買い物をする事で、恥ずかしさが上乗せされています。その上、二人きりの時の呼び名を呼ぶ事など、絶対に出来ません。
ローゼルもそれには特に拘らず、丁度良い機会だからと、公式の呼び方の練習をするようにとビスカスに命じておりました。
「スグリ様に差し上げるなぁ、こいつぁどうですかねー」
ビスカスが繋いで居ない方の手でローゼルに指し示したものは、オレンジの香りのする練り香水でした。
「……ビスカス?」
「へい?」
「もっと、真面目に考えて。」
「まっ……真面目でさあ!俺だって、一生懸命考えてやすよ!!」
ローゼルはビスカスの顔をじーっと見て、ふーっと溜め息を吐きました。