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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第6章 仲直りの問題
それを振り払う様に、ビスカスは陽気にふざけました。
「そういやあの頃、おじさんとかおじさん臭いとか言われて、かなり落ち込みやしたねー」
「そうだったの?」
「ええ。だってあん時ゃあ、今のリュリュより五つ位若かったんですぜ?」
「……仕様がないじゃない」
「へい?」
「だって、お前ーーあなた、違う人みたいだったんだもの」
「え」
ローゼルは唇を尖らせて、思わぬ事を言いました。
「お前、修行に行って帰って来たら、男の人になってたんだもの」
「おとっ」
「男の人の匂いがして、声も低くなって、言葉遣いも変わってて、よそよそしくなって……」
「お嬢様……」
「おじさんなんて言って、ごめんなさい。大好きよ、お前の匂い」
ビスカスは、微笑みながら首筋に口づけてするりと腕を絡ませてきた妻に、頬擦りして抱き締めました。
「……口利きが下品でも良いんですかい?」
「上品に話されたら、落ち着かないわ。……声も好き……歌う声も、話す声も。私を呼ぶ声は、もっと好き」
ローゼルはビスカスにちゅっと口づけ、ビスカスはローゼルを抱き締めました。
「形は多少変わったかもしれやせんけど、俺ぁリュリュの事ぁ、いつだって大好きなままでしたよ。何が有っても、ずっとです」
「……知ってるわ」
ビスカスは、求婚を断った時も、従兄弟と婚約した時も、いつでもローゼルの幸せだけを願ってくれて居たのです。自分の幸せはビスカスと共に居る事だとはっきり自覚して伝えた今は、何が有っても命ある限り、ローゼルの傍らに居てくれるでしょう。
「謝るのに十年かかったけど、おじさんって言ったこと、許してくれる?」
「勿論でさあ」
「……仲直りの印に、仲良くしたいわ」
十年前に泣いていた少女が今では自分の妻になり、護衛や庇護者として頼られているだけでなく、男としても求められている事に、ビスカスは震える程の喜びを感じました。
「畏まりました、お嬢様」
「……さっきから何回か、お嬢様って呼んだわね。その罰も、貰わなきゃ」
「え」
「昔のこと話したせいね。私も、あなたのことお前って呼んだ罰を払うわ」
ローゼルは大輪の薔薇の様に、艶やかに笑いました。
「沢山気持ち良くして、沢山気持ち良くなって。」
「……全力で、善処いたしやす」
こうして二人は空が白むまで、お互いの罰の甘い代償を払い合いました。