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初めて女を抱くらしい私の護衛に甘やかされ過ぎて困っています
第7章 大きさの問題

 ローゼルは元々大変な美人ですから、注目されるのは珍しい事では有りません。
 しかし、以前は男に熱い視線を送られる事は良く有りましたが、女たちからはちらっと見られて後は気のない振りを装われる事がほとんどでした。
 ところが、今はどうでしょう。店中の人間がーー男女二人連れの者どちら共までもが、ローゼルを見てぼーっとなっています。


『……むしろ、お前みたいな庶民的な猿と結婚したりなんかしたら、心が広くて健気で親しみやすい女として、価値が上がると思うわよ』


(まさか……)

 ローゼルの求婚を「どう見ても釣り合わないし、お嬢様の価値を下げてしまうから」という理由で断った時に言われた軽口めいた言葉が、ビスカスの脳裏に甦りました。

(まさか、本当に、俺と結婚したせいで、お嬢様が益々おモテになる様にっ?!……いやいや、結婚はまだ公表してねーんだから、そんな筈は……!!)

 皮肉なことにずっと傍に居たビスカスは気付いて居なかったのですが、ローゼルは確かに、前より一層魅力的になっておりました。
 ローゼルはビスカスとの仮婚礼以来、知らず知らずのうちに纏っていた人を寄せ付けない殻の様な物が、大分柔らかくなっておりました。そのため、美貌に加えて本来持っている愛らしさまでもが、折々に垣間見える様になって居たのです。
 誰もが認めざるを得ない高貴な美しさに、無邪気な可愛さが加わったのです。今までなら「綺麗だけどつんとした美人」と見ていた様な人々も、「綺麗なだけでなく可愛らしくもある美人」に変わったローゼルに、心を鷲掴みにされて居りました。

「……ねえ、ビスカス?……ビスカスったら!!」
「……へ……?……へいっ?!」
「聞いていた?私の話」
「……っ聞いてますっ……」

 手巾を両手で持ちながら眉を寄せて少し膨れて見せるローゼルは凶悪な程麗しく愛らしく魅惑的で、ビスカスは耳まで真っ赤になりました。
 この二人のやり取りに、ビスカス本人は勿論のこと、周りで見ていた人々も、美人というものは何をしていても人目を引かずには居られず、どの角度から見ても、どんな顔をしていても、いつでも美人なのだ……と、感嘆の溜め息を吐きました。
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