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セイドレイ【完結】
第13章 独りぼっち
夏休みが終わり、今日から新学期が始まる。
あれから地下室へ客が訪れたのは2回で、そのいずれも荒垣だった。
それ以外に、雅彦、健一、慎二の相手は通常どおり、といったところか。
闇の売春ビジネス──そんなふうにものものしく始まったわりには、想像していたより頻度が少ない──亜美はそう感じていた。
どうやらこれは、会員の選定や交渉を慎重に進めているからであり、今後は徐々に増えていくとのことである。
たしかに、荒垣は新堂に借りがあったから話がスムーズに進んだだけで、そうでもなければこんな危険な話に乗っかる者のほうが少ないのかもしれない。
荒垣とのセックスについて、特筆すべき点はあまりなかった。
制服、体操服、スクール水着など、もっぱらそれらを亜美に着用させ、娘への不満を口にしながら行うというパターンが主だった。
独特なフェチズムは感じられたものの、変態性でいえば慎二の方がいくらもうわてであり、荒垣のそれは乱暴さも変態さもまだ耐えうるレベルだった。
強いて言えば、千佳の父親であるということ──これに尽きるであろう。
亜美は同級生の父親に抱かれることで手にした三千円を財布に入れ、新学期初日を迎えた。
少しでも家にいる時間を短くしたい亜美は、いつも始業の30~40分前に登校しており、この日もいつもと変わらない時間に家を出た。
今日からの学校生活を思うと、登校する亜美の足どりは重たい。
本山と千佳の存在。
これらはこの夏休みの間に増えてしまった、新たな悩みだ。
亜美は学校が近づくにつれ、分かっていたことではあるものの、やはり緊張を隠せなかった。
とくに、千佳の顔はできれば見たくない。
クラスが違うのが不幸中の幸いだが──と、そんなことを考えているときにかぎって、それはやってきてしまうものだ。
もうすぐ校門に着く──というところで、亜美の正面から自転車に乗って登校してくる千佳の姿が目に入った。
亜美は一瞬、歩みを止める。
(あれは…間違いない。あの子が千佳ちゃん──)
遠目ではあるがこうしてあらためて見てみると、千佳にはどことなくその父、太蔵の面影がある。
千佳は亜美に気づくことなく、校門へと入っていく。
おそらく、部活の朝練習があるのだろう。
(あの子は…なにも知らない…──)
そんな千佳のことが、亜美には少しだけうらやましく思えた。