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セイドレイ【完結】
第14章 武田家の憂鬱

「"お見合い" …ですか?」

「そうだけど。なんか文句あんの?」

金曜の夜。
実家に戻ってきた健一は、いつもよりどこか苛立っている様子である。

「まぁ、亜美に八つ当たりしてもしゃーなし。ごめん。今のは忘れて──」

どうやら話によれば、健一はこの日──雅彦とともに「お見合い」の顔合わせに行っていたらしい。
どおりでかしこまった服装をしているのだろう。
健一は窮屈そうなネクタイを振りほどき、スーツをそのへんに脱ぎ捨てると、地下室のベッドにため息をつきながら腰を下ろした。

同じくベッドに腰かけていた亜美には、その健一の横顔にとある面影を感じていた。

そう──、慎二だ。

健一と慎二は骨格こそ似ているものの、その佇まいは対照的だ。
陰鬱でジメジメとした不潔感がある慎二と比べ、健一は一見、明るく社交的に見えなくもない。
おそらく、社会人としてそれなりに身なりを整えていることも大きいだろう。
体型においても、慎二が不摂生による肥満体型であるのに対し、健一はどちらかというとレスラー体型に近かった。
2人とも大柄なことには違いなく、このあたりは雅彦の血を引いていることがうかがえる。

また、健一はほかの2人とは違い、亜美に対して滅多に高圧的な態度を取らないのも特徴のひとつだった。
結果としてやっていることは自体は同じなのだが、亜美に対して要求することのベクトルがやや異なるのだ。

そんな健一ではあるが──今見せている横顔には、あの卑屈な弟の面影がダブっている。

亜美は不思議に思い、話の続きを聞いてみたくなった。

「それで…その…お見合いはどんな感じでした…?」

「どうって…どうもこうもないよ。全然タイプじゃなかったしな」

ふてくされた様子で、健一はさらに続けた。

「親父はさ、金のために俺を結婚させたいわけよ。ま、要は政略結婚ってことね。相手はどっかの社長令嬢とかばっかでさ。これまで何度も何度も…。相手も俺のことを『医者』っていう肩書きでしか見てないし。それに…俺にだって──」

なにかを言いかけて、健一が言葉を詰まらせる。

健一も今年で30歳。
まだ研修医とはいえ、ゆくゆくはこの武田クリニックの看板を背負う次期院長なのだ。
そう考えれば、縁談のひとつやふたつどころか、むしろ引く手あまたであったとしてもなんら不思議ではないのだが──。


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