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セイドレイ【完結】
第15章 見えない敵
「トーメさん…?おはようございます!」
「あら~亜美ちゃん。おはよーさんだねぇ。こんな早くに学校に行くのかい?」
週が明けたの早朝──。
亜美が登校途中にトメの家に立ち寄ると、トメは庭先の植木鉢に水をやっていた。
「今日から亜美ちゃんが来るんじゃないかって思って、いつもより早めに水やりしてたんじゃよ。よく来てくれたねぇ」
「エヘヘ…トメさんに会いたくなっちゃって」
「まぁまぁ。ありがたいことじゃ。今日は天気もいいし、いい日になりそうじゃよ。…そうじゃ、アレはあそこに置いといたでの」
トメは小屋を指差し、亜美のスマホがそこにあることを示した。
「ありがとうございます──」
亜美は小声でトメにお礼を言うと小屋へと向かい、スマホで「セイドレイ」にアクセスする。
(やっぱり…ダメだったか──)
亜美はそこで、また新たな動画が投稿されていること、そしてこれまでの動画も変わらず公開されていることを確認する。
『コノ女ヲ知ッテイル。動画ヲ削除シロ。』
このコメントを書き込んだのは、ほかならぬ亜美だった。
この程度では効果が見込めないことは承知のうえだが、案の定、慎二にはこたえていないようだ。
(ヤダ…もうさっそくこんなに──)
すでに新しい動画には続々とコメントが書き込まれている。
朝から目を覆いたくなるような文字の数々──亜美はため息をついて肩を落とした。
亜美はそれから10分ほどスマホを操作したのち、棚へ戻すと小屋の戸を閉めた。
「──トメさんありがとうございます。また帰りも寄りますね!」
「はいはい。気をつけて行くんじゃよ~」
「はい…!行ってきます…!」
トメに送り出され、亜美は学校へと向かう。
一方そのころ──学校の体育館裏の男子便所では、亜美が登校してくるのを今かと待つ本山が、スマホの画面を怪訝そうな顔で睨んでいた。
画面にはマップが表示されており、とある座標に位置情報のアイコンが表示されている。
「ここは…通学路には違いないが…あいつ、一体どこに隠してるんだ?」
本山は亜美にスマホを渡す際、万一の事態に備えてスマホの位置情報をGPSで特定することのできるアプリをインストールしていたのだ。
このアプリは、亜美のスマホ上ではインストールされていることが分からない仕組となっている。