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セイドレイ【完結】
第15章 見えない敵

(あんなものが半永久的に、って──)
こうしている今にも、あれらの動画は拡散されていく。
実は、亜美がスマホを必要とした理由はほかにもあったのだが──それにはまだ時間がかかる。
「──す、すいません。今日は失礼します」
「お、おい?高崎?ちょ、ちょっと待て。まだ先生は話が──」
亜美は本山の話をさえぎるように倉庫を飛び出した。
とにかく、今はトメの顔が見たい。
そう思いながら校門を出ようとした、そのとき──。
「あっ…!た、高崎さんっ…!?」
亜美の目に飛び込んで来たのは、貴之だった。
(えっ…?なんでいるの…?)
おそらく、貴之もそう思っただろう。
お互いにさきに帰ったと思っていたのだから。
「──なんか、野球部の顧問の先生に捕まっちゃって。俺、野球やってたんすけど、故障で辞めちゃって。でも、見学でもいいから来ないかってしつこくて~はは。そんで今帰ろうと思ったら、ちょうど高崎さんがいたから…」
「そう…なんですね」
「高崎さん、急いでたけどまだいたんすね!部活か何かですか?」
「い、いえ…。ちょっと先生に用事があって…」
「そうなんすか!あ、さっきはいきなり話しかけちゃって、ごめん。俺、いきなり嫌われたかと思って結構落ち込んでたんすよ…」
髪の毛を掻きながら、はにかむ貴之。
もともとのタレ目が笑顔になるとより一層垂れ下がり、愛嬌を増す。
その屈託のない表情に、亜美は一瞬目を奪われた。
「──あれ?俺の顔、なんか変…?」
「い、いえ…」
(なに…?今の感じ──)
「あ、よかったら…一緒に帰っても…いい?」
「え、あ…そうです…ね。はい──」
亜美は内心、しまった──と思うも、この流れでは貴之と下校せざるをえなかった。
「──高崎さんも転校してきたんすよね?」
「ええ…まぁ…」
「それに、高崎さんはめっちゃ成績優秀なんでしょ?先生が言ってたんすよ」
「そう…ですか…」
どうにか会話の糸口を探そうとする貴之だったが、亜美の素っ気ない受け答えのせいで、言葉が宙を舞う。
そのとき──。
「──あら?亜美ちゃん。おかえり。今日はお友だちと一緒かい?」
今日は寄らずに帰ろうとトメの家の前を通り過ぎようとしたとき──偶然庭に出ていたトメに声をかけられてしまった。
(あぁ…まずい…どうしよう──)

