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セイドレイ【完結】
第15章 見えない敵

「──呼び止めてすまない。いや最近なぁ?このあたりで変質者が出てるらしくてなぁ。見回りしてたらちょうどうちの学園の制服を見かけたんでな。えー、高崎と──?」
「──あ、水野、水野貴之です!今日から転校してきました!」
「ほぉ。お前が水野だったか。家はこっちなのか?」
「は、はい…!」
(変質者なんて絶対嘘…。あとをつけられてたの?でもなんで──)
変質者がいるとするならそれは本山だ、と亜美は言ってやりたかった。
「──ところで…さっきのばあさんは誰だ?」
「あ…」
貴之が亜美に視線をやる。
そんなふたりの反応を見逃すまいと、凝視する本山。
「──あ、あのおばあさんは…私のスマホを預かってくれてるんです」
亜美はそう言って、本山をキッと睨めつけた。
「──ほう?それはまたどうしてだ」
本山の顔色が変わる。
「???」
まったく事態が飲み込めない貴之。
「私、家が厳しくて、スマホを持たせてもらえないんです。だからあのおばあさんに預けてるんです。べつに、校則にも違反してないと思いますけど」
語気が強まる亜美。
その凛とした雰囲気に、貴之は少々驚く。
「──ふん。まぁいいだろう。家まで気をつけて帰るんだぞ。それから水野──」
「──は、はい!なんすか?」
「お前部活はやるのか?」
「い、いえ…。今んとこその予定はないすけど…」
「そうか。実はな、高崎には放課後 "奉仕活動" をしてもらっててな。ワケあって内容までは言えんのだが」
「…奉仕活動…ですか」
「あぁ。お前は知らんかもしれんが、高崎は学園きっての優等生だ。いろいろあるんだよ。まぁ、時間にしたら3~40分程度のことだ」
「そうなん…すね…」
話が読めず困惑する貴之に対し、ずっと地面を向いてうつむいたままの亜美。
「──そこで、だ。さっき言ったように、このあたり最近物騒なんでな。水野さえ良ければ、高崎が奉仕活動が終わるのを待って、これからもなるべく一緒に下校してやってくれないか?」
(なっ──、なに考えてるの…?)
「は、はい…!全然俺は構いませんけど…」
「そうか。よかったなぁ?高崎?」
うつむいたまま、亜美は返事をしない。
「──ということだ。それから、"奉仕活動" のことはほかの生徒には言うなよ?」
「わ、わっかりました…!」

