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セイドレイ【完結】
第15章 見えない敵

「じゃあふたりとも、気をつけて帰れよ。高崎、明日も頼むぞ~?じゃあな──」

本山はそう言い残すと、来た道をスタスタと戻って行った。

「──なんか、いかつい先生っすね」

「…………」

「てか、高崎さんめっちゃすごいんすね…!奉仕活動ってボランティアってことっしょ?しかもなんか選ばれし者みたいな…。内申とかにも関係してくるんすよね?」

事情をなにも知らない貴之の言葉が、亜美の耳には痛かった。

「俺なんかが仲良くしてもらっちゃっていいのかな…?はは…。やべー、今さら緊張してきちゃった」

ふたりは再び歩き出す──が、本山に遭遇してからというもの、亜美はうつむいたままなにも言葉を発しない。

「──あ!あれなんすよ!俺ん家!」

貴之が、前方に見えるタワー型のマンションを指差す。

「あそこの9階で…。高崎さん家はどの辺?」

「私の…家?」

すると、亜美は「武田クリニック」の病棟を指差した。

「えっ…?マジで?!高崎さん家って病院なの??」

「ねぇ…水野くん…」

「な、なに…?」

「今日のこと…誰にも言わない、って約束してくれる?」

「え…?」

「トメさんのことも、スマホのことも…奉仕活動のことも」

「あ、うん…。全然、いいけど──」

すると、うつむいていた亜美がようやく顔を上げる。

「──よかった。ありがとう、水野くん」

それまでほぼ無表情だった亜美が、控え目ながらも笑みをこぼした。
その可憐さに、貴之は思わずドキッとする。

「(やべっ…!今の可愛すぎるんだけどっ…!!)」

「──じゃあ、ここでお別れだね」

「えっ?あ、あー。うん…。そうだね…」


『また明日』


そしてふたりは、それぞれの家へと帰っていく。


「(高崎さん…やべー超かわいい…。思い切って声かけてよかった…!)」

軽くスキップを踏み、美少女との出会いに小躍りする貴之。
亜美と近所であることを知ったのがきっかけではあるが、その容姿に魅了され声をかけてみたのもまた事実である。

「(でも…今考えると、いろいろ不思議だよな…──)」

自宅マンションのエレベーターの中で、貴之は亜美についてふつふつと疑問が湧き上がってきていた。


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