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セイドレイ【完結】
第22章 種
そして、その日の下校時。
ふたりはいつものように、通学路を連れ立って歩いていた。
すると公園の前で、亜美がふと歩みを止める。
「──亜美、どうしたの?」
「…うん。あの…実はね、今日ちょっと、水野くんに大事な話があって…だから公園寄ってかない?」
「大事な話って…?」
「う、うん。あそこで…話そ?」
ふたりは公園のベンチに腰掛ける。
そこは初めてお互いに気持ちを伝え合い、唇を重ね合った場所──。
「──なんか…あの日を思い出すな。へへ。そんで、大事な話って…なに?」
「うん…──」
ふたりにしばしの沈黙が流れる。
「──どした?俺…なんかしちゃったかな…?」
なかなか話を切り出さない亜美に、貴之は次第に不安になる。
「──ねぇ水野くん。私のこと…好き?」
「えっ…?なに…言ってんだよ。好きに決まってるじゃん…」
「そっか…。じゃあどんなことでも…受け止めてくれる?」
「も、もちろん…!どうした?家で辛いことでもあった…?」
「あのね…私────、妊娠しちゃったの」
「え……?うそ…だろ……?」
今はっきりと聞こえた、"妊娠"の2文字──。
確かに亜美は今、そう言ったのだ。
「水野くんの赤ちゃん、妊娠しちゃった──」
貴之は頭が真っ白になる。
必死で状況を飲み込もうとしても、まるで理解が追いつかない。
もちろん、心当たりは大いにあるが──しかし、亜美はピルを飲んでいたのではないのか、と──。
所詮、高校1年生の男子である貴之は、ピルに避妊効果があることくらいは分かっていても、それがどういうものか詳しくは知らなかったし、考えもしなかった。
ただ、亜美の「大丈夫だから」という言葉のみを鵜呑みにし、最初こそ躊躇したものの、快楽を知ってしまってからは当然のように亜美に膣内射精を繰り返していた。
時間さえあれば、場所を選ばず、何度も何度も──亜美のその甘美な肉体と言葉に誘われるままに。
それが生殖の行為であることなど、とうに忘れていたのだ。
貴之は、なにか言わなければいけない──と思いながらも、亜美にかけるべき言葉がどこにも見当たらなかった。
ただ、「どうしてこんなことに」という、そこから思考を進めることができない。
そんな貴之を見かねたのか、亜美が重い口を開いた。