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セイドレイ【完結】
第22章 種
「水野くん…。今、どうして…?って思ってるよね。ピル飲んでたのに、って──」
それはまさに、たった今貴之が胸にしまい込んだ言葉だった。
「──でも、ごめんね。できちゃったの」
ピルの避妊率は100%ではない。
飲み忘れなどがあれば、さらにその確率は下がる。
そもそも男は、女性がピルを服用するのは避妊が目的だと勘違いしている者も多いが──実際には生理痛や生理不順などの治療にも使われる。
貴之も、所詮はその程度の認識だった。
もちろん、亜美を傷つけるようなことをしていた覚えはない。
しかし結果として、避妊のすべてを亜美に委ねていた。
そして快楽に任せ、考えることを放棄していたのも事実だ。
たとえそれが、"仕組まれたこと" だったとしても──。
「──……ハァ…ハァッ……ウッ!……ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
すると、貴之の息が極端に乱れ始めた。
呼吸の間隔が徐々に短くなり、息をうまく吐くことができない。
次第に手足は痺れはじめ、やがて胸を締め付けられるような苦しみに襲われる。
「──み、水野くん…?」
その異変を察知した亜美は、貴之の顔を覗き込んだ。
「ど…、どうしたの?大丈夫??」
貴之は亜美に返事をすることもままならず、苦痛に顔を歪め、胸を掴むようにしてその場にうずくまってしまう──。
「──ねえ?水野くん?!どっか痛いの?!」
さすがにこの様子は──ただごとではない。
「どっ、どうしよう…。早く救急車…呼ばなきゃっ…!水野くん、スマホ借してっ??」
「──ご…めん…。ハァッ…ハッ……か、かばんにっ…くっ、くす…り……」
「薬?!薬があるの…?ちょっと待って、今すぐ出すからっ…」
亜美は慌てて貴之のカバンを漁ると、その中に入っていた錠剤を見つける。
「──これ?!これでいい?!」
貴之が頷いたのを確認し、亜美は自分のカバンから温かいお茶が入った水筒を取り出す。
「はいっ…これ、飲める…?」
「あ…あり…がとっ…──」
貴之はどうにかその錠剤を服用したものの──亜美はどうしていいか分からず、ただ地面にうずくまる貴之の背中をさすることしかできなかった。