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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
「──では、本人に聞いてみるとしますか?当事者が一番自覚していることでしょう。貴之くん…だったね?君は亜美と性交渉をしたことは認めているんだな?」
雅彦が、うつむいたままの貴之にたずねる。
「は…はい。認め…ます」
「どのくらいの頻度で?」
「…ほ、ほぼ毎日…です」
「──貴之っ!」
紗枝ははずかしめにあっているような気持ちになり、たまらず悲鳴にも似た声で息子の名を叫ぶ。
しかし、雅彦は詰問を続けた。
「──その際、一度でも避妊を試みたことはあるかね?」
「…ありません」
「それはどうしてかな?」
「…………」
下を向いたまま、黙り込む貴之。
この部屋に入ってから、貴之と亜美はまだ一度も目を合わせていない。
すると、紗枝が雅彦に食い下がる。
「──あの、お言葉ですが。そもそも、そのような行為を促したのは、お宅の亜美さんにも原因があるのではないかと…」
「ほう。すると、なんですかね。うちの亜美がお宅の息子さんを誘惑したとでも言いたげですが。どうなんだ?亜美」
亜美は、突如振られた質問に動揺し、言葉を返すことができない。
「──では貴之くん。君のご両親は、亜美が君を誘惑したと言っているが、そうなのかい?」
「…違います」
(水野くん…?)
「あ、亜美は…亜美さんは悪くない…です」
(水野くん…ダメッ──)
「──貴之っ…!ねえ、嘘よね?亜美さんにせがまれて仕方なくしたことなのよね??」
「紗枝…!やめないかっ!」
「だってあなた…どうしてっ…どうして貴之なのよ……ウッ…ウウッ──」
紗枝はどうしても想像ができなかった。
これは親ならみなそうなのかもしれないが──貴之がまさかそんなことをしでかす息子には思えなかったのだ。
年ごろではあるため、異性に関心があるのは理解できる。
しかし、心優しい子に育っていたはずの息子が、女性を傷つけるような無責任な行為を自ら進んで行うとは思えず、それにはなにか理由があるはず──という疑念を振り払うことができない。
俊之とて、内心は紗枝と同じ気持ちであった。
しかし、感情的になるのをグッとこらえ、ここはあくまで冷静に事実確認をしなければと考えていた。