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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
「は、はぁ…。しかしながら、これはあくまで私たち家族と武田さんのお宅の問題でありまして…。外部の方に口を挟まれるのはちょっと御遠慮願いたいのですが…」
「いや…それがそうでもないんですよ。実は今さっき、この部屋の前で小耳に挟んだのですが…弁護士を雇うつもりがあるとかなんとか…?」
「そ、そうですよ…それがなにか問題でも?こちらとしてもできるだけ平和的な解決を望んでいます。しかし、武田さんの言い草があまりにも…」
「そうですか。まぁ、どうされようと水野さんのご自由ですけれど、仮に裁判になった場合、貴之君の退学処分は免れないかと…」
「たっ…退学処分!?」
「ええ。私も長らく、学校という場には身を置いておりまして。こういうことは何度も見てきたのです。もし仮に裁判になり、雅彦が…亜美さんの保護者側が貴之君の退学処分を望んだ場合、学園としてはそうするしかないのです」
「そ、そんな……」
「保護者側としては、仮に合意があったとしても──常識的に、今後は亜美さんと貴之君を同じ環境には置きたくないでしょう。もちろん、亜美さんは今後も我が学園に残る意思があることから、当然、貴之君の退学処分を望むはずです──そういうことでいいかね?雅彦」
「あぁ…もちろんそのつもりだ」
「で、ですがっ…──」
「──まぁ落ち着いてくださいよ、水野さん。学園としましても、女子生徒を妊娠をさせたということで、著しく風紀をみだす行為だと捉えています。つまり、裁判など起こそうものなら逆に貴之君の退学処分は免れません。先ほどあなたは私のことを『外部』とおっしゃいましたが、早かれ遅かれこのままではいずれ私の耳に届いていた話です」
「つまり…なにがおっしゃりたいのでしょうか?」
「むしろ、このタイミングで私の耳に入ったことは幸運と捉えるべきです。奇しくも雅彦は産科医ですし、そもそも中絶費用も、慰謝料も要求するつもりはありません。もちろん、裁判を起こす気もない」
「では…一体私たちに…どうしろと言うのですか?」
「はは…。それではまるで、こちら側がなにかを強要しているみたいじゃないですか。違いますよ?起こってしまったことは仕方ないんです。しかし、過ちを認めて謝罪し、反省すること。まずはそこからだと思いませんか?」
「過ちを…認める…──?」