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セイドレイ【完結】
第23章 折衝
そのころ、客間では雅彦と俊之の話し合いが平行線を辿っていた。
「──ですから、亜美さんと貴之は交際していたんですよ?合意もなにも、そりゃ…うちの息子に自覚が足りなかったことは認めます。ただ…先ほど妻から聞きましたが、貴之は亜美さんに子どもを生んでほしい、そして結婚したいとまで言っている。亜美さんはそれを聞いて涙したそうじゃないですか…。息子のした行動は反省すべきですが、決して亜美さんを傷つけようとするつもりなどはありません!」
「はて…結婚したいとまで思っている相手に、そんな無責任なことができますかね?そこだけ聞くと聞こえはいいですが…お宅の息子さんの行動から察するに、亜美のことをまるで性欲の捌け口として扱っていたのではないのでしょうか?いくら多感な年ごろとはいえ、ほぼ毎日ですよ?しかもあのような場所で避妊すらせず…これでは、いくら亜美のことを大切に思っていたとしても、説得力がありませんな」
「だからっ!…では、亜美さん本人はなんと言っているんですか!?」
「亜美はおとなしく、心の優しい子です。自分がひどいことをされたにもかかわらず、おそらく貴之君のことを庇っているのでしょう。だからこそ、私がその気持ちを代弁しているんです」
「そっ…そんなこと言ったら、貴之だって心の優しい子ですよ!貴之こそ、亜美さんのことを庇っていると…父親としてはそう思っています!これ以上、うちの息子を侮辱するようなことをおっしゃるのなら、こちらは弁護士をつけることも考えざるを得ません…!」
両者一歩も引かぬ水掛け論の中──突如ふすまが開き、ある男が客間に現れた。
「──お取り込み中失礼致します。これはこれは水野さん。いつも我が学園にご協力いただきまして…お世話になります。ちょっとよろしいですかね?」
「あ、あなたは…!なぜここに…!?」
「どうも。申し遅れましたが、学園の理事をしております新堂です。このたびはいろいろ大変だったようで…失礼」
新堂は雅彦のとなりに腰を下ろした。
「驚かせてすいませんね。と言いますのも、実は雅彦と私は同級生でして…旧知の仲と言いますか。で、今回亜美さんと貴之君のお話を聞きまして、学園の理事として少しでも…事が円満に運ぶように口出しさせていただこうかな、なんて思っておりましてね。まぁ、単なるお節介ですが」