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セイドレイ【完結】
第24章 性夜の鐘

この季節、街も人も色めき立ち、どこか浮かれている。
かつては亜美もその中の1人だった。
冬は亜美の好きな季節だ。
ひんやりとして澄んだ空気に触れていると、どんな遠くまでをも見渡せるような気がした。
しかし、今の亜美には遠くはおろか、目の前でさえ霞んで見えない。
きっと自分の瞳が汚れてしまったからであろう──そんなことをぼんやりと考えながら、終業式を終えた近隣の学生たちで賑わう商業施設へと足を踏み入れた。
どの店舗も、間近に迫ったクリスマス一色に染まっている。
どうにも、時間の流れや季節の移り変わりというのは、強大なエネルギーだ。
ついさっきまで、クリスマスなどもう関係ないことだと思っていたのに──飾られたツリーやイルミネーションをいざ目の前にしてみると、忘れていたはずのいろいろな感情が甦ってくるから不思議だった。
亜美は店内を巡回し、新堂から渡された金でいくつかの物を購入する。
塵も積もれば山となるとはまさにこのことで、ある程度の金額が溜まっていた。
新堂も変なところに律儀で、例の15人に輪姦された夜は、きっちり1万5千円がすべて千円札で手渡された。
亜美の財布の中には入り切らず、10枚ずつの束にまとめ、カバンの内ポケットに仕舞っていた。
この千円札の数はそのまま、陵辱の証だ。
あの夏の日、握り締めた千円札を本山に突き付けたことでさえ、もう遠い過去の出来事に思えた。
買い物を終えた亜美は、少し気になっていることがあったため、施設内の本屋へ入る。
亜美は興味のある小説や参考書に目移りしつつ、あるコーナーへと向かった。
『妊娠・出産・育児』
そう分類された本棚の前に立ち止まると、上から順に自分が必要としているものを探す。
制服姿の女子高生がこのコーナーに立ち寄るのは勇気がいることのようにも思えるが、亜美はさほど気にしていなかった。
とある一冊を手に取りページをめくっていると、亜美の視界に腹を抱えた妊娠が映り込む。
どうやらその女も、なに本を探しているようだった。
亜美は手に持つ本よりも、その丸々と大きくなった腹に目を奪われ、思わず声をかけた。
「──あっ…あのっ…すいません!」
突然、育児書のコーナーで制服姿の女子高生に声をかけられた妊婦は、一体何事かと驚く。
「えっ?えっ?私??どうかしたの…?」

