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セイドレイ【完結】
第24章 性夜の鐘

亜美は帰る途中、年末の挨拶を兼ねてトメの家に寄った。
明日から冬休みに入るため、次に会えるとしたら年が明けてからになる。
しかし、呼び鈴を押しても返事がない。
どこかへ出かけているのだろうか。
亜美はトメの顔を拝むのを諦め、小屋へと向かうとスマホをチェックする。
なんとなく、今日は「セイドレイ」をチェックする気にはならず、ほかの操作を中心に行った。
すると、本山からメッセージが届いた。
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今日で二学期も終わりだな。
体調はどうだ?
来月、またチャンスがある。
詳細はまた日が近くなったら連絡するが
次も来てくれたら嬉しい。
たが無理はするな。
俺も少し反省している。
お前とはこれからもいい関係でいたい。
パンツも返さにゃならんしな。
じゃあな。
来年もよろしく。
良いお年を。
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(先生、もう来年のこと言ってる…。そのころ私は──)
──どうなっているか分からない。
亜美はそんな予感がしていた。
いや、来年はおろか、明日のことさえ分からなかった。
貴之とお腹の子のことについては、なんとなくこの冬休み中に決着がつくと感じていた。
もともと新堂から "別れ話" を切り出せ、と言われていたこともあり、貴之との交際も、理由はどうあれこの冬休み中に終わりを迎えてしまうのだろう。
それは亜美にとって、非常に辛いことだった。
しかし一方で、貴之はこれ以上自分と関わらないほうがいい、とも思っていた。
『亜美と家族になりたい』
あの日、貴之はたしかにそう言ってくれた。
亜美はもう、それだけで十分だったのだ。
これ以上は──もう本当にこれ以上は、貴之とその家族を巻き込むわけにはいかない。
亜美は、もしもの場合に備えて、新堂と雅彦に "ある提案" をすることを心に決め、覚悟していた。
大切な人を守りたい──。
たとえ自分が不幸になっても、自分のせいでほかの誰かが傷つくよりは遥かにマシだと──そう思っていた。
本山のメールに返信をし、亜美は先ほど買った物のうちのひとつを小屋の中にそっと置いた。
そして、包装紙にこう書き記した。
『トメさんへ メリークリスマス(ちょっと早いけど)』

