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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

事の真相はこうだ。
雅彦は、毎夜寝室に訪れる亜美に、あるときから "栄養剤" だと偽って、ピルを服用させていたのである。
なんの疑問も抱かず、雅彦に差し出されるままにそれを服用し続けていた亜美。
知識に乏しい亜美は、成分が入っていないプラセボ剤の色が違うことなど知る由もなかったし、それの服用期間に出血もなかった。
そのため、亜美はまさか自分がピルを飲まされているなどとは夢にも思わなかったのだ。
さらに雅彦は、もしあのイベントの際に妊娠していたとしたら──という仮定のもと、エコー写真はほかの患者のものを流用し、あたかも亜美が妊娠したかのように偽装したのである。
なんとしてでも、亜美が妊娠することは避けなければならない。
幸い、そのあたりのことは産科医である雅彦が一任を受けている。
ピルを服用させ、亜美を妊娠できない状態にする。
そして、怪しまれないように数回に1回は妊娠を偽装し、結果的に流産したことにしてしまえばいい。
それを繰り返すうち、最終的には亜美が不妊になったことにしてしまえば──。
雅彦はそう考えていた。
それと同時に、このビジネスから足を洗いたい旨を新堂に申し出ている。
ここ最近の雅彦の行動は、すべてこれらの計画に沿って動いていたのだ。
亜美の妊娠を偽装することにより貴之との問題が発生することになるが、雅彦にとってそれはどうでもいいことだった。
雅彦なりに、雅彦のやり方で──新堂から亜美を守ろうとしていたのである。

