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セイドレイ【完結】
第25章 暗転

そして──2人はそのまま、病室のベッドでカラダをひとつに重ね合った。
照明を消した薄暗い病室の中に、ふたりの熱い吐息とベッドが軋む音だけが鳴り響く。
壁を1枚隔てたとなりの個室には、産後間もない母親と新生児が安息の時を過ごしているというのに──その横で、欲望のままに情交を結ぶ雅彦と亜美。
「──アッ!おとおさまっ…アッ、アンッ…」
「こら…あまり声をあげるんじゃない…。患者に聞こえたらどうする…?ワシだって我慢してるんだっ…おっ、おおっ…」
小声でそんなやり取りを交わしながら、正常位で腰を振る雅彦。
どうやら近ごろ、下半身の調子が安定しているようだ。
そんな雅彦を、亜美は下から見上げていた。
膣を貫く肉棒に身悶えながら、しかしどこかしら恍惚の表情を浮かべて──。
白衣の下から覗く雅彦の分厚い胸板にそっと手で触れると、そこはじんわりと汗ばみはじめている。
眉間にシワを寄せ、声を押し殺しつつ、しかし腰の動きを止めることができない雅彦のもどかしいような表情を眺めていると、亜美は言いようのない感情に包まれた。
自分を毒牙にかけた男──そんな男を、求めずにはいられない自分。
亜美はもう、そんな自分に整合性を取ることができなかった。
雅彦から口移しでピルを飲まされたとき──カラダの芯がカッと熱くなるのが分かった。
貴之に抱きしめられたときに感じたぬくもりとはまったく違う、滾るような熱量が全身を駆け巡った。
これは理屈ではなかった。
ただただ、今はこの男の胸にすべてを委ねたかった。
支配されたかった。
この男の庇護下に置かれている──そのことが、亜美にとてつもない堕落を与えるとともに、このうえない安堵をもたらしていたのだ。
「──あっ、亜美っ…今日はこのまま…ハアッ…ハアッ…イケそう…だっ…いいかっ?イクぞっ??」
息を荒らげ、前のめりになる雅彦。
亜美はそんな雅彦の背中に腕を回し、全身でそれを受け止める。
「おとうさまっ…きてっ…アッ!ああっ…──」
歓喜にも似た声を漏らし、亜美も絶頂を迎えた。
「ドクッドクッ…」と子宮に注がれる雅彦のザーメン。
ピルのせいで着床することのないその精子の大群に、雅彦はやり切れなさを託しているかのようだった。
(お父様…いつか私…お父様の子を────)

