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セイドレイ【完結】
第26章 形勢

慎二は田中の車を駐車場に停めると、助手席に置いてある黒いビニール袋を持って車を下りた。
「こいつは次回に持ち越しか…」
袋の中身は、亜美に着せるためのコスプレ衣装だった。
田中の部屋を見て、彼がとあるアニメのオタクだという事を知った慎二は、そのアニメキャラのコスプレ衣装をコンビニに行く前に購入していたのだ。
本来ならば亜美にこれを着させ、明け方まで3Pを愉しむつもりだったが、状況が状況だけに今日はもう退散した方がいいだろう。
早く帰って『タカ』の正体について亜美を問い詰めなければならない。
しかし簡単に口を割るだろうか。
慎二はやむなくば拷問も視野に入れながら、田中の部屋のチャイムを鳴らす。
「……あれ?おかしいな」
二度、三度とチャイムを鳴らしても、一向に出てくる気配が無い。
不審に思った慎二は、ドアノブに手をかけ回してみる。
ーー鍵は開いている。
恐る恐るドアを開け中へ入ると、部屋の布団の上で腹を押さえてうずくまる田中の姿が目に入る。
「たっ、田中さんっ!!?」
慎二は慌てて田中に駆け寄り状況を確認する。
「だっ大丈夫!?一体何があったんだ…」
部屋を見渡すと、若干ではあるが荒らされた形跡がある。
そして何より、
亜美がいないーー。
「す、すいま…せん……師匠が帰ってきたと思って…鍵を開けたら……『奴』が……」
「奴!?奴って…もしかして『タカ』のこと!?」
「は、はい…入って来るなり殴られて、そのまま亜美ちゃんを…連れ去って行ってしまって……すいません…僕、どう責任を取っていいか…本当に本当にごめんなさい……」
「まじかよ……」
慎二は言葉を失った。
何故、『タカ』は田中の家を知っているのか。
もしかして、公園から後をつけられていたのか。
冷静になろうとすればするほど、慎二の額からは脂汗が流れ出す。
一度ならず二度までも、亜美が連れ去られたのだ。
田中を責める訳にもいかず、かと言って何か手立てがあるわけでは無い。
亜美を置いて出た自分の不手際ではあるが、仮にここに居たとしても、『タカ』から亜美を守れたであろうか。
黙り込む慎二に、田中が声をかける。
「やはり…警察へ届け出ます…か?」
「……いや」
慎二はそうポツリと呟くと、立ち上がってこう言った。
「…田中さん、ごめん。俺、帰るわ」
「こいつは次回に持ち越しか…」
袋の中身は、亜美に着せるためのコスプレ衣装だった。
田中の部屋を見て、彼がとあるアニメのオタクだという事を知った慎二は、そのアニメキャラのコスプレ衣装をコンビニに行く前に購入していたのだ。
本来ならば亜美にこれを着させ、明け方まで3Pを愉しむつもりだったが、状況が状況だけに今日はもう退散した方がいいだろう。
早く帰って『タカ』の正体について亜美を問い詰めなければならない。
しかし簡単に口を割るだろうか。
慎二はやむなくば拷問も視野に入れながら、田中の部屋のチャイムを鳴らす。
「……あれ?おかしいな」
二度、三度とチャイムを鳴らしても、一向に出てくる気配が無い。
不審に思った慎二は、ドアノブに手をかけ回してみる。
ーー鍵は開いている。
恐る恐るドアを開け中へ入ると、部屋の布団の上で腹を押さえてうずくまる田中の姿が目に入る。
「たっ、田中さんっ!!?」
慎二は慌てて田中に駆け寄り状況を確認する。
「だっ大丈夫!?一体何があったんだ…」
部屋を見渡すと、若干ではあるが荒らされた形跡がある。
そして何より、
亜美がいないーー。
「す、すいま…せん……師匠が帰ってきたと思って…鍵を開けたら……『奴』が……」
「奴!?奴って…もしかして『タカ』のこと!?」
「は、はい…入って来るなり殴られて、そのまま亜美ちゃんを…連れ去って行ってしまって……すいません…僕、どう責任を取っていいか…本当に本当にごめんなさい……」
「まじかよ……」
慎二は言葉を失った。
何故、『タカ』は田中の家を知っているのか。
もしかして、公園から後をつけられていたのか。
冷静になろうとすればするほど、慎二の額からは脂汗が流れ出す。
一度ならず二度までも、亜美が連れ去られたのだ。
田中を責める訳にもいかず、かと言って何か手立てがあるわけでは無い。
亜美を置いて出た自分の不手際ではあるが、仮にここに居たとしても、『タカ』から亜美を守れたであろうか。
黙り込む慎二に、田中が声をかける。
「やはり…警察へ届け出ます…か?」
「……いや」
慎二はそうポツリと呟くと、立ち上がってこう言った。
「…田中さん、ごめん。俺、帰るわ」

