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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
「………ん」

亜美が目を開けると、田中の部屋がぼんやりと視界に入ってくる。

(あ…れ?ここは…私、もしかして眠っちゃってた……?)

亜美は曖昧な記憶を辿る。
ここは、田中の部屋だ。
そう、確かここへ連れて来られた後、慎二は外出してしまい、田中と二人きりになった。
そして田中とセックスした後…風呂から上がり、田中から出されたお茶を飲んだところまでは覚えている。

机の上に置かれた飲みかけのコップが目に入る。

そう、そのコップでお茶を飲んだ後……

しかし、それ以降の記憶がどうしても思い出せない。
あれから何時間が経過したのだろうか。
慎二はまだ戻って来ていないのか?

ぼやけた視界が徐々にはっきりしてくる。

横たわる亜美を取り囲むように、3つの人影が見える。

一人は田中と…慎二?
ではもう一人は一体?


「…お目覚めかね?」


そう亜美に語りかける声は、寝ぼけていた亜美の目を一瞬にして覚まさせた。


「……なっ…なんで…あなたがここに…!?」


そう。
その声の主は、他でもない、新堂だった。

そして、亜美は更に驚く。
新堂の隣には、肩を落としてうつむく田中と、もう一人男が居る。

ーー本山だ。

亜美は咄嗟に起き上がり、カラダを後ろの壁に寄せ身構える。

全く状況が理解できず、混乱に震える亜美を嘲笑うかのように、不敵な笑みを浮かべる新堂。

「…おいおい、そんな化け物を見るかのような目はよさないか。…おはよう亜美。お目覚めの気分はいかがかな?」

狭いワンルームの部屋に、大の男が3人居るだけでも酷く圧迫感がある。

どうしてここに新堂が?
それに本山まで。
そもそも慎二はまだ戻って来ていないのか?

次々と湧き上がる疑問。
そしてそれを見透かしているかのような新堂の表情。
その両脇に居る田中と本山はうつむいたまま、さっきから何も言葉を発しない。

「…どうして?って顔をしているな。無理もないか。では、分かりやすく説明して差し上げようではないか。ねぇ?本山先生…?」

新堂はそう言って、本山に視線を送る。

「わっ…わたくしがっ…ですか!?」

本山はたいそう困った様子で身をすくめている。

「ふんっ…この役立たずめ。まぁいい。私からじっくり説明するとしよう」
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