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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
「…という話なんだよ。何か質問はあるかね?」

これまでの経緯について一通り説明を終えた新堂が、そうわざとらしく亜美に尋ねる。

「…なんでっ…どうしてそんなことまでして…!?」

それまで沈黙を保っていた亜美がようやく口を開き、新堂に食い下がる。

「…どうして?不思議なことを聞くなぁ。私はね、いつになく腹が立っているんだよ。私がどうして怒っているか…それは君が一番分かっているはずなんだがね」

「…わ、私が何をしたって言うんですか!?これまでだってあなたの言う通りにしてきただけじゃないですかっ!!」

「…表向きはそうだねぇ。それに、私が腹を立てているのは君にだけじゃあ無いんだよ。君がどんな手を使って雅彦を垂らしこんだかは知らんが…やはり君は大した女だよ。子供だと思って舐めていたのが私の間違いだったなぁ」

「なっ…何のことですか?私は何も…」

「…ふふ。まぁ良しとしよう。そうやってとぼけていられるのも今のうちだからねぇ。とりあえず、君はしばらくあの家には帰れない。何か不都合でもあるかね?たとえば…『毎日飲まなきゃいけない薬』がある、とか」

(ちょっと待って…どうしてそれを…!?)

新堂のその言葉に、亜美は背筋が凍った。

「…おやおや、その顔は図星かな?当てずっぽうでも言ってみるもんだなぁ。まぁどうせ、雅彦にピルでも飲まされているんだろう?まさか、長年の親友にそんな裏切りをされるとは思っていなかったよ。友情なんて脆いもんだねぇ…私は哀しいよ、はははは!」

ここへ来てようやく、亜美は新堂の目論みに気づき始める。

亜美の二度目の流産に疑念を抱いた新堂は、雅彦が何らかの方法で亜美に避妊させているのではないかと推測した。

それを確認するのに一番手っ取り早いのは、雅彦から亜美を一時的に遠ざけることだった。

「…最初はね、私が君を連れ去って、どこか適当なホテルにでも監禁しようとも思っていたんだが…それじゃあ私が悪者になってしまうからねぇ。それでどうしようか考えていた時に、本山先生から『セイドレイ』の事を教えてもらってね。まぁキッカケは、出回った動画を見た保護者からのタレコミだったんだが。だから恨むんなら本山先生を恨むんだなぁ」

亜美は、新堂の隣で小さくなっている本山に視線を向けるが、本山は下を向いたまま目を合わそうとしない。


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