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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
「…でもね、最初からこうしようと思っていた訳じゃあ無いんだよ。何か面白いことはないか、そう思っていただけなんだ。そしたら、田中さんていう新しい登場人物が現れてねぇ。だんだん役者が揃って来たから、これは私がシナリオを描かなきゃいけないなって、ただそれだけの話なんだよ。途中でアクシデントも起きたが、結果的には盛り上がる筋書きになって私は満足しているよ」

全く悪びれのない口調で、淡々と経緯を説明する新堂。

「本当なら慎二も一緒に監禁して、あの豚にもしっかりお灸を据えようと思ってたんだがね。二人が同時に居なくなれば、君が失踪した疑いを慎二にかけることもできる。そして『セイドレイ』の事も含め、雅彦に息子のしでかしたことの責任をしっかり取ってもらうつもりだったが…こともあろうかあのバカ息子はあっさり君を見捨てて逃げてしまった。いやぁ、これには腹を抱えて笑ってしまったよ。君もとんだ薄情なご主人様を持ったもんだなぁって」

つまり新堂は、『セイドレイ』の件とは別に、亜美を雅彦から遠ざけるための計画があったということ。

そしてたまたまそれが今回の件と重なり、慎二や田中を利用してその計画を実行したのだ。

「…そう言えばもう一人『タカ』という役者が居たが、結果的に彼もこの物語を盛り上げるのに一役買ってくれたねぇ。このままフェードアウトさせとくにはもったいないが…まぁそれはまた考えるとしよう。だんだん面白くなってきたよ、くくくっ…」

現時点で、新堂は『タカ』の正体が貴之であることには気づいていないようだ。
それは亜美にとってはこの状況下で唯一の救いだったが、新堂のことである。今後また何をしでかすか分からない。

亜美はうつむき、小さく深呼吸をする。

「……私はこれから、どうすればいいんでしょうか?」

「…ほう?もう現実を受け入れたのかい?いやはや君には恐れ入るよ。そうだなぁ、しばらくはここで生活しながら、私が所有している分譲マンションの空き部屋へ通ってそこで客の相手をしてもらおうか。早速、会員には連絡しておくよ。普段の身の回りの世話は、田中さんにお願いしようかねぇ?田中さん、それでいいかい?」

「は、はい…」

田中は亜美に申し訳なさそうにしながら、小さく返事をする。
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