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セイドレイ【完結】
第27章 愛
古い友人と偶然再開し、明け方まで飲んでいた雅彦が帰宅する。

こんなに酔ったのは何年ぶりであろうか。
午前の診療開始まではあと数時間しかない。

とりあえず酔いを覚まさなければ。
少し仮眠を取ろうか悩みつつ、雅彦は冷蔵庫を開けミネラルウォーターをコップに注ぐと、一気にそれを飲み干した。

ひとまずシャワーを浴びようと浴室へ向かう。
服を脱ごうと、亜美にプレゼントされたサスペンダーのベルトを肩から外した時、何故だか無性に亜美が恋しくなった。

残りの人生で、あと何回亜美を抱くことができるだろう。
そんなことを考える。

もしかしたら5年後、自分はこの世に居ないかもしれないし、はたまた明日には、男性としての機能を永遠に失うかもしれない。

決して長くない残りの人生を賭け、これから何をすべきかあらためて想いを巡らせる。

雅彦はこの時、再度銀行に融資を募ったり、親が遺した土地の活用など、ありとあらゆる金策に走っていた。

また、これまでは多忙なのと興味が湧かないことから断っていたが、複数の医大から声がかかっていた講演会や教授としての受け入れなども前向きに考えようとしていた。

最悪、武田クリニックを廃業することも視野に入れながら、息子二人の今後と、何より亜美を地下室から、新堂から解放しなければならない。

新堂という男が独特の矜恃を持っていること、そしてその恐ろしさは長い付き合いの中で雅彦が一番よく分かっている…つもりだった。

しかし、元は苦楽を共にした友人なのである。

正面から向き合い、責任と落とし前さえしっかり付ければ理解してくれるに違いないーー、雅彦はそう思っていた。


短いシャワーを浴びた雅彦は、寝顔を見ようと亜美の部屋へ向かう。
この所、亜美は毎夜のように雅彦と寝室を共にしていたが、昨夜は自分が家を空けたため自分の部屋で寝ているだろうと思った。

特に何をするつもりもない。
ただ、寝顔を見れればそれでよかった。

雅彦は亜美の部屋のドアをそっと開ける。

しかし、そこに亜美の姿はなかった。

となると、慎二の部屋かーー。

雅彦は小さく溜め息をつき、慎二の部屋をこっそり覗く。

しかし、散らかった部屋の中に居たのは、大の字になっていびきをかいて眠る慎二の姿だけだ。

「…おかしいな。一体どこへ…」
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