この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セイドレイ【完結】
第27章 愛
「師匠…ごめんなさい……」
三人が帰った部屋の中で、田中は一人そうつぶやいていた。
田中は、慎二達がやってきた際、亜美を繋いでいた鎖とリードを、咄嗟にベランダへと隠していた。
最初はクローゼットに隠そうと思っていたが、ベランダにして正解だった。
帰り際、「今度は普通に遊ぼう」と言ってくれた慎二の言葉に、田中は胸を痛めていた。
やはり、自分はとんでもない間違いを犯している。
だが、もう後戻りはできないーー。
では、この時亜美はどこに居たのか。
実は、慎二たち三人が田中の家に到着するほんの数分前、亜美は確かにこの部屋の中に居たのだ。
そして玄関をノックする音がすると、本山が現れた。
「…高崎、行くぞ。さぁ、これ羽織って」
本山はそう言って、全裸の亜美にコートを着せた。
「…行くって…どこへ?」
亜美が本山に尋ねる。
「…客が来るらしいぜ。理事長にマンションまで連れて来るように言われた。さぁ、急ぐぞ」
新学期が始まるまで客は来ないはずでは…と思ったが、新堂のことである。早速、無理矢理にでも予定を入れたのだろう。
田中は無言で亜美の鎖を外すと、首輪は着けたまま、亜美は本山に連れられて部屋を出て行った。
アパートの階段を降り、路駐されている本山の車の後部座席に乗り込む。
車がゆっくり走り出す。
亜美は虚ろな表情で何となく窓の外を見ていた、その時ーー。
前方から、見覚えのある男達三人が歩いてくる。
(えっ…?嘘…どうして!?)
亜美は目を凝らした。
徐々にスピードが上がる。
ほんのわずかな一瞬、亜美を乗せた車と、その三人の男達がすれ違う。
暗がりでも分かった。
亜美がプレゼントしたネクタイを締めた健一。
同じく、亜美がプレゼントしたスウェットを着た慎二。
そして、その二人と一緒に居るはずのない、貴之。
亜美は振り返り、三人の小さくなって行く背中をバックドアのガラス越しに見る。
何故だか、涙が溢れそうになる。
貴之はもちろんのことだが、健一や慎二にまで、どうしようも無く恋しい気持ちが溢れてくる。
情、というものなのか。
亜美はその気持ちを理解できないまま、本山が運転する車は右折をし、三人の姿が視界から消える。
しかしその背中が見えなくなってからも、亜美はずっと後ろを振り返っていたーー。
三人が帰った部屋の中で、田中は一人そうつぶやいていた。
田中は、慎二達がやってきた際、亜美を繋いでいた鎖とリードを、咄嗟にベランダへと隠していた。
最初はクローゼットに隠そうと思っていたが、ベランダにして正解だった。
帰り際、「今度は普通に遊ぼう」と言ってくれた慎二の言葉に、田中は胸を痛めていた。
やはり、自分はとんでもない間違いを犯している。
だが、もう後戻りはできないーー。
では、この時亜美はどこに居たのか。
実は、慎二たち三人が田中の家に到着するほんの数分前、亜美は確かにこの部屋の中に居たのだ。
そして玄関をノックする音がすると、本山が現れた。
「…高崎、行くぞ。さぁ、これ羽織って」
本山はそう言って、全裸の亜美にコートを着せた。
「…行くって…どこへ?」
亜美が本山に尋ねる。
「…客が来るらしいぜ。理事長にマンションまで連れて来るように言われた。さぁ、急ぐぞ」
新学期が始まるまで客は来ないはずでは…と思ったが、新堂のことである。早速、無理矢理にでも予定を入れたのだろう。
田中は無言で亜美の鎖を外すと、首輪は着けたまま、亜美は本山に連れられて部屋を出て行った。
アパートの階段を降り、路駐されている本山の車の後部座席に乗り込む。
車がゆっくり走り出す。
亜美は虚ろな表情で何となく窓の外を見ていた、その時ーー。
前方から、見覚えのある男達三人が歩いてくる。
(えっ…?嘘…どうして!?)
亜美は目を凝らした。
徐々にスピードが上がる。
ほんのわずかな一瞬、亜美を乗せた車と、その三人の男達がすれ違う。
暗がりでも分かった。
亜美がプレゼントしたネクタイを締めた健一。
同じく、亜美がプレゼントしたスウェットを着た慎二。
そして、その二人と一緒に居るはずのない、貴之。
亜美は振り返り、三人の小さくなって行く背中をバックドアのガラス越しに見る。
何故だか、涙が溢れそうになる。
貴之はもちろんのことだが、健一や慎二にまで、どうしようも無く恋しい気持ちが溢れてくる。
情、というものなのか。
亜美はその気持ちを理解できないまま、本山が運転する車は右折をし、三人の姿が視界から消える。
しかしその背中が見えなくなってからも、亜美はずっと後ろを振り返っていたーー。