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セイドレイ【完結】
第29章 ぬけがら

「…あ、もしもし?田中です。ちょっと報告がございまして…」
自宅で待機していた田中が、何者かに電話をかけている。
「…実は先程、師匠……じゃなくて、慎二さんとそのお兄さん、あと、亜美ちゃんの彼氏だっていう高校生くらいの子が3人、家へ訪ねて来たんです…どうやら3人で亜美ちゃんを探しているみたいで」
電話の相手は新堂だった。
田中は、3人が家へ訪ねてきたことを新堂に報告していたのだ。
「…し、しかも、もう一人居た『タカ』という男の正体が、どうやらその亜美ちゃんの彼氏だったようで……はい、詳しい状況は分かりませんが、彼らは亜美ちゃんを連れ去ったのが、『タカ』では無いということには気づいています。一応、シラは切り通しましたが、怪しまれているかもしれません…なので、この家で亜美ちゃんをかくまうのは危険では無いかと……」
亜美を自宅にて監視する役目を与えられていた田中は、その危険性を新堂に説明した。
あくまで慎二達には、亜美を連れ去ったのは『タカ』だと言い張っているからだ。それも新堂の命によるものだが、『タカ』が『水野貴之』だと分かった今、唯一連れ去られた現場に居た田中に疑いがかけられるのは間違いないからだ。
「…はい。………はい。分かりました。はい。では、また何かありましたらすぐに連絡します…失礼します」
短い通話を終えた田中は、深いため息をついた。
「はぁ……」
半分は脅しのようなものだったとしても、新堂に加担したのはやはり間違いでは無かったのか。
つい昨日まで、安月給で働くただの一般人だった田中。
まさかそんな自分が少女の監禁に手を貸し、不法な性的ビジネスに間接的に関与することになろうとは思ってもみなかった。
今自分がしていることは、紛れもなく犯罪である。
一人の少女の人生から、暴力によって何もかもを奪わんとする、卑劣な犯罪行為の片棒を担いでいるのだ。
自分の保身のため、亜美を更なる絶望の淵へ追いやろうとしていることに対し、もちろん田中の良心は痛んでいた。
しかし、もう後戻りはできないのである。
田中は、部屋の隅に置いてあったビニール袋を手に取った。
それはあの日、田中が喜ぶだろうと、亜美に着せるために慎二が買ってきたコスプレ衣装だ。
「師匠……さよなら」
田中はその衣装に、ザクザクとハサミを入れて切り刻んでいったーー。
自宅で待機していた田中が、何者かに電話をかけている。
「…実は先程、師匠……じゃなくて、慎二さんとそのお兄さん、あと、亜美ちゃんの彼氏だっていう高校生くらいの子が3人、家へ訪ねて来たんです…どうやら3人で亜美ちゃんを探しているみたいで」
電話の相手は新堂だった。
田中は、3人が家へ訪ねてきたことを新堂に報告していたのだ。
「…し、しかも、もう一人居た『タカ』という男の正体が、どうやらその亜美ちゃんの彼氏だったようで……はい、詳しい状況は分かりませんが、彼らは亜美ちゃんを連れ去ったのが、『タカ』では無いということには気づいています。一応、シラは切り通しましたが、怪しまれているかもしれません…なので、この家で亜美ちゃんをかくまうのは危険では無いかと……」
亜美を自宅にて監視する役目を与えられていた田中は、その危険性を新堂に説明した。
あくまで慎二達には、亜美を連れ去ったのは『タカ』だと言い張っているからだ。それも新堂の命によるものだが、『タカ』が『水野貴之』だと分かった今、唯一連れ去られた現場に居た田中に疑いがかけられるのは間違いないからだ。
「…はい。………はい。分かりました。はい。では、また何かありましたらすぐに連絡します…失礼します」
短い通話を終えた田中は、深いため息をついた。
「はぁ……」
半分は脅しのようなものだったとしても、新堂に加担したのはやはり間違いでは無かったのか。
つい昨日まで、安月給で働くただの一般人だった田中。
まさかそんな自分が少女の監禁に手を貸し、不法な性的ビジネスに間接的に関与することになろうとは思ってもみなかった。
今自分がしていることは、紛れもなく犯罪である。
一人の少女の人生から、暴力によって何もかもを奪わんとする、卑劣な犯罪行為の片棒を担いでいるのだ。
自分の保身のため、亜美を更なる絶望の淵へ追いやろうとしていることに対し、もちろん田中の良心は痛んでいた。
しかし、もう後戻りはできないのである。
田中は、部屋の隅に置いてあったビニール袋を手に取った。
それはあの日、田中が喜ぶだろうと、亜美に着せるために慎二が買ってきたコスプレ衣装だ。
「師匠……さよなら」
田中はその衣装に、ザクザクとハサミを入れて切り刻んでいったーー。

