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セイドレイ【完結】
第30章 姿なき脅迫
亜美が姿を消し、約半月が過ぎた。

年が明け、男達は表面上、これまで通りの日々を送っていた。

これといって新堂からは、亜美の消息についての報告は無い。

雅彦と健一は医師としての勤めを果たし、慎二はまた自室に引きこもる毎日。

もちろん、誰一人として、亜美の存在を忘れていたわけでは無いのだがーー、亜美が居ないという現実を、誰もが受け入れられずに居た。

若い女性が殺害されたなどというニュースをテレビやネットで目にすると、それが亜美で無いことを祈った。

そして貴之は新学期を迎えていた。

ひとり貴之だけが、亜美が留学したという新堂の筋書きを信じていた。
しかし、恋人に突如、たった一枚の手紙のみで別れを告げられた彼もまた、失意の底をさまよっていた。



それぞれが亜美に想いを馳せる中、『それ』は突然やってくる。



とある日の早朝。
雅彦が新聞を取りにポストへ行くと、そこに差出人不明の郵便物が入っていた。

差出人どころか宛先さえ書かれていない15cm四方程の封筒には、何やら薄く固い物が入っているようだ。

何だか気味が悪い、と雅彦は思いつつ、部屋に持ち帰り封筒の中身を確認する。

すると、中から出てきたものは、ラベルの無い真っ白な一枚のDVDらしきものだった。


「…何だこれは…一体誰がこんな……はっ!も、もしかして…」


雅彦は慌ててそのDVDをデッキにセットする。


恐る恐る再生ボタンを押すと、そこには浴室が映し出されていた。


嫌な予感がするーー。


雅彦はゴクりと唾を飲み、画面を見つめていた。


撮影者が、ゆっくりと蓋が閉められた浴槽へ近付いて行く。


やがて、浴槽の蓋が開けられる。



そこに映っていたものはーー。



「…あ、亜美っ……!?」



雅彦は思わず目を疑った。
嫌な予感はしていたが、それが最悪の形で的中してしまった。


画面に映し出されていたもの。
それは、浴槽の中で目と口を塞がれ、手足を拘束され、鎖で繋がれた、紛れもない亜美の姿だった。


音はしない。
音量を上げてみても、どうやら音声は収録されていないようだ。


徐々に亜美の姿がアップになると、二穴にねじ込まれるように挿入された玩具に気付く。


「あぁっ……やめてくれ…一体、一体誰がこんなことを……?!」
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