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セイドレイ【完結】
第31章 少女の肖像
「今日も派手にやられたもんだな…大丈夫か?寝ててもいいぞ」

客の相手を終え、後部座席でぐったりとうなだれる亜美に、本山はそう言葉をかける。

亜美からは特に反応は無い。いつものことだ。

監視役として、亜美が犯されているのを襖一枚隔てた部屋から見聞きしている本山は、その一部始終を知っている。

もしそれが、ただ亜美が恐怖に泣き叫んで暴行を受けているだけだとしたら、さすがの本山でもその役目は務まらなかっただろう。

実際に自分の目で見て、この短期間のうちに分かったことがあった。

もちろん亜美はこんなことを望んでいないのは大前提であるがーー

無抵抗な亜美が男達からの陵辱にひたすら耐えているだけ、かと言われると、少し様子が違うのだ。

亜美はまず、全ての客のことを完全に把握していた。
客によって性癖は様々で、相当にハードなプレイを好む者が多くを占めるが、中にはまるで疑似恋愛でもしているかの如くソフトな者も居る。

亜美はその全ての趣味嗜好に応えようとする。
しかし、それがどうも演技をしているようには見えないのだ。
少なくとも、本山の目にはそう映った。

亜美が自ら積極的にわざとらしく媚びたり、芝居めいた素振りをする訳では一切無い。
むしろ基本的にはおとなしく、圧倒的に受け身なのである。

しかし、よくよく観察していると、客によって腰の振り方ひとつ、腕の回し方ひとつ、微妙にニュアンスを変えている。
いや、変わってしまう、のかもしれない。

恐怖で悲鳴を上げる時も、快感にあえぐ時も、相手が何を欲しているのかを亜美は完全に理解しているように思える。

つまり、どの客にとっても亜美はその究極の理想を体現しているのだ。

これは、自分が亜美を抱いている時は意外と気づかない。
あまりにも自然で、まるで自分に抱かれるために亜美が存在しているように錯覚してしまう。

他の男が亜美を抱いていても、亜美は自分とのセックスを一番に求めているに違いない、何故かそう思えるのだ。

ただ恵まれた容姿というだけでは、これだけの男達を満足させ続けるのは難しいであろう。

そして何より重要なことは、そこに嘘が無い気がするのだ。
少なくとも、男達は皆そう思っている。

我こそが、亜美の男としてふさわしい、と。

それが高崎亜美という少女の、最大の魅力にして、最凶の不幸だった。

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