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セイドレイ【完結】
第9章 盟友
納戸かと思っていたその扉の向こう側は、どうやら地下へと続く階段が伸びているようだった。
(リフォームしてたのってもしかして…これ?)
広い屋敷だとは思っていたが、まさか地面の下にも部屋があるとは。
亜美は雅彦に続いて階段を降りると、また1枚扉があり、そこにも南京錠がかけられていた。
雅彦が鍵を開け、扉を開ける──。
するとそこには、広々とした空間が現れた。
コンクリートで打ち付けられた床と壁。
地下ということで、真夏だがひんやりとしている。
だだっ広いその部屋の中央には、キングサイズはあるかというベッドがぽつんと置かれていた。
ベッドの足側に面する壁は一面鏡張りになっており、その反対側の壁には、ひとつ30インチほどのモニターが4台設置され、さまざまな方向から部屋の様子が映し出されている。
部屋の奥の壁側に目をやると、透明のビニールカーテンで仕切られたシャワーとバスタブ、洋式の便器が設置されていた。
そのほか、何か物を入れるための大きめな移動式の棚や、冷蔵庫なども置かれている。
それらの中に、亜美は見たことのない器具が何台か置かれているのが目に止まった。
「X」の形をした磔台や、分娩台を思わせる形状の什器。
そして、天井からぶら下がる4本の鎖の先端には、黒いレザーにスタッズがあしらわれたカフス──。
亜美はそれらが "SM什器" であることなど知る由もないが、どういう用途で使われるものなのか、おおよその見当はついた。
「…亜美。お前がここに来ることが決まってから、ワシは少しずつ準備をしていたんだ」
雅彦が感慨深くそう言う。
「もともとあった地下の貯蔵庫を改装してな。業者に頼んだ部分もあったが、任せられない部分はほとんどワシ1人でやった。大変だったが…」
「あの……お父様、私はここで何をすれば…?」
亜美はもう、以前のように抵抗はしなかった。
おそらく、この地下室が亜美のためにリフォームことは明白だろう。
詳しいことは分からないが、大体は察しがつく。
「ほう…お前も利口になったじゃないか」
満足気な笑みを浮かべる雅彦。
雅彦がこの地下室を造り上げた意図は、亜美がこの家へ引き取られるすこし前にさかのぼる──。